商品を差別化する2つの方法
マーケットで生き抜いていくためには、商品の差別化が不可欠です。私自身、「どのように商品づくりをしているのか」「どのように参入障壁を築いているのか」などさまざまな質問をいただきます。
今回は、とくにAmazon ECにおける商品の差別化について、マーケットで生き残るための考え方やポイントを解説します。ぜひ参考にしてみてください。
商品の差別化について
商品づくりにおいて、差別化のポイントとして大きく2つのアプローチがあります。
1つ目は「商品開発の差別化」で、商品そのものを作るときに意識すべきポイントです。2つ目は「ビジネスモデルの差別化」で、これは意図的に参入障壁を作るというアプローチです。
①商品開発の差別化
多くの消費者は、何か商品を購入する際に必ず比較をしています。たとえばファッションであれば、商品のデザインや色、質感、またはブランドなどで選びます。商品を開発する際は、特に下記3つの要素をどのようにコントロールするかが重要です。
- 価格
- 機能
- デザイン
価格で差別化する
まず、もっとも分かりやすく、そして難しいのが「価格」です。
よい商品を安く作れれば売れますが、通常はよい商品を作ればその分価格が上がってしまいます。また、いざ新商品を開発しても、なかなかすぐには売れないでしょう。販売量が小さいうちは大量生産ができないため、コストを下げられません。広告費についても、CPA(1回の購入あたりにかかる広告費)がどんどん高くなってきています。
コモディティ化(高付加価値であった商品の価値が低下し、一般的な商品になること)や完全競争市場(多数の買い手と売り手が存在し、財とサービスについて完全な情報開示がされている市場)を前提とすれば、価格の安さだけで戦い続けるのは難しいでしょう。
機能で差別化する
2つ目の差別化ポイントは「機能」です。機械系の商品であればスペック、食べ物であれば味、シャンプーや化粧品であれば効果・効能というように、さまざまな機能が存在します。
商品開発において、機能面をデザインや企画に落とし込む際には「カスタマーレビューを読む」ことが重要です。参入している市場のなかで、商品が「いいと思った理由」をカスタマーレビューから分析することで、売れている理由が分かってきます。
一方で悪いレビューからは、文句・クレーム・要望などが見つかります。それらを改善できれば大きな差別化になるため、商品開発で意識すべきポイントです。
デザインで差別化する
商品開発において、デザインで差別化をする際に気をつけるべきポイントが下記の3つです。
- 色、質感
- 形状
- パッケージ(メイン画像)
1つ目は「色、質感」での差別化です。色と質感はセットでとらえるべきだと考えています。たとえば車であれば、同じ黒でも鏡面加工をしたツヤのある黒もあれば、マット加工をした黒もあり、色と質感の組み合わせによって印象は大きく変わります。
2つ目は見た目に大きな影響を与える「形状」の差別化です。例として、Nebula(ネビュラ)というプロジェクターがあります。プロジェクターといえばEPSON(エプソン)などの平置きタイプが一般的ですが、Nebulaのプロジェクターは筒状にすることで、形状を差別化できています。
ユーザーが「プロジェクター」で検索をしたとき、多くのEPSON製品のなかに筒状のNebulaが表示されるととても目立つのです。
3つ目は「パッケージ(メイン画像)」での差別化です。ネット通販において、メイン画像は商品のパッケージといっても過言ではありません。
実店舗を例に挙げると、ドラッグストアで売られているサプリメントのパッケージは、ボトル入りのもの、箱に入ったもの、ジップロックタイプの袋に入ったものなどさまざまな種類があります。
これをECに置き換えてみると、Amazonでマルチビタミンを買おうと商品検索をした際、たくさんの商品画像が表示されます。商品画像が並んで表示された状態を棚(シェルフ)に例え、インターネット上ではデジタルシェルフと呼ばれています。
商品がデジタルシェルフに表示されるときに重要なのが、視覚要素です。デジタルシェルフを見ている状態というのは、ユーザーが実店舗でそのコーナーの前を通っているのと同じ状態だといえます。だからこそ、クリックしてもらうためにはメイン画像の見栄えが非常に重要なのです。
もし実店舗であれば、通りがかりに見つけた商品のパッケージがいいなと思えば手に取ってもらえます。デジタルシェルフでも同様に、検索結果のなかでメイン画像が際立っていればクリックしてもらいやすくなります。
たとえば商品が肉の場合、ユーザーの五感を刺激するようなシズル感など、いかにおいしそうな画像にするかが重要です。スーパーであれば、切り取られた肉の塊がそのまま置かれているかもしれません。しかし楽天などのECサイトでは、肉の塊が少しスライスされ、垂れている様子の画像などが使われます。ECにおいては視覚的要素がデザインにおける差別化になっており、非常に重要なポイントです。
デザインにおける「色、質感」「形状」「パッケージ(メイン画像)」という3つの要素は、ユーザーの行動を大きく変えます。しかし、どれか1つを優先すればほかが成り立たなくなるというトレードオフの関係でもあります。機能をよくしようとすればコストが上がり、コストを抑えようとすれば機能やデザインが落ちるといった具合です。
POD/POP/POFの差別化
POD/POP/POFという3つのフレームワークは、差別化された要素を組み合わせるうえで重要な考え方です。以下の動画では、世界最大の消費財メーカーであるP&Gが使うマーケティング戦略のフレームワークとして紹介しているので、そちらも参考にしてみてください。
参考動画:Amazon物販で稼ぎたい方必見!3つの商品開発のコツ【元アマゾンジャパン社員が解説】
POD(Point of Difference)は、「差別化ポイント・選ばれる理由」です。
POP(Point of Parity)は「同等性」です。競合と同じなので、この機能や要素があったからといって比較対象にはならないような条件のことです。
POF(Point of Failure)は、「諦めポイント」です。この要素があることで、もうユーザーは自社を選ばないだろうと販売を諦めることになる要素です。
差別化においては、上記3つの観点で要素を分解できます。
ただし、POD/POP/POFは「時間軸」でとらえることも重要です。たとえば、現時点で女性ユーザーに向けて、白色やピンク色の新商品を販売すれば、今はまだPOD(差別化ポイント)になり得るとします。しかしそれに気づいた競合メーカーは、1〜2年後に同じ色の商品を出してくるでしょう。その結果、せっかく見つけたPODはPOP(同等性)へと変化してしまいます。
つまり、マーケットで勝ち続けるためには、参入障壁をつくるという意味でのビジネスモデルの差別化が必要になります。
②ビジネスモデルの差別化
「参入障壁をつくる」とは、モノづくりのプロセスであるバリューチェーンを長くすることです。バリューチェーンとは、原料調達から製造した商品が顧客の手に届くまでの一連の流れのことで、ビジネスモデルの差別化においてはその長さが重要になります。
たとえば、私たちが販売しているフィットネスバイクはOEM(Original Equipment Manufacturer)と呼ばれる方式を採用しており、他社ブランドの商品を製造する工場でOEM企業によって作られています。
OEMを使えば簡単に同じような商品が作れるため、POD(差別化ポイント)だと思っていた点も長期的にはPOP(同等性)になってしまうのです。発注者はフレームやサドルの色、質感を選択するだけなので、商品がコモディティ化し、市場で勝てなくなります。
そこで、「バリューチェーンを伸ばす」ことで他社が簡単には真似できないようにします。具体的には、まずフィットネスバイクにフレームを取り付けました。さらに、Amazonの物流に最適化した金型を製作しました。
オリジナルの金型には500〜1,000万円程度の資金が必要になるので、新規参入してくる競合は投資をためらいます。
また、1〜2年後には競合に真似されることも見越しておく必要があるでしょう。先行者として市場を開拓するため、常に先回りをして投資・商品投入を行ないます。1年後にはカスタマーレビューとしてユーザーの要望が蓄積されており、もっとよい商品を出せるようになるでしょう。市場でリーダーシップを取り続けるためには、ビジネスモデルで差別化をしていくことが必要です。
長期的に勝ち続け、参入障壁を作るためにもバリューチェーンを長くするという考え方は非常に重要です。バリューチェーンを長くするために、モノづくりの上流にあたるR&D(商品開発)・企画にアプローチする方法や、マーケティング/CRM(顧客関係管理)からアプローチして伸ばしていくという方法もあります。
バリューチェーンのなかの「プロモーション」には、Amazonのカスタマーレビューなども含まれます。先行者ブランドは先に販売をしているため、レビューがたくさんたまりやすいです。レビューは少ないより多い方が圧倒的に有利なため、レビューの蓄積もバリューチェーンを伸ばすことにつながります。
まとめ
さまざまな差別化の方法として、「商品づくりの差別化」「ビジネスモデルの差別化(参入障壁の作り方)」という考え方について解説しました。商品には、「価格」「機能」「デザイン」という3つの差別化ポイントがありますが、それぞれがトレードオフの関係になっています。PODの考え方を使って、最適な組み合わせを見つけましょう。
ただ、時間軸によってPODだったものがPOPになる可能性があります。参入者が増えることで、価格の安いプレイヤーが入ってきたり、新しいアイデアを真似されたりするからです。
マーケットで勝ち続けるためには、自社のPODがPODであり続けられるようなモノづくりの構造/バリューチェーンを作り、そのバリューチェーンを伸ばしていくことが大切です。
◆詳しくはたなけんのEC大学の解説も参考にしてください!
Ankerの型破りなプロジェクターに学ぶ!商品の差別化ポイント2選