スマートウォッチ市場
まずは日本市場とAmazon市場の違いから見ていきましょう。
スマートウォッチといえば、Apple Wachを身につけている人が多いイメージがあると思います。
MMD研究所のデータによると、日本のスマートウォッチ市場はApple Watch一強となっています。スマートウォッチを持っている人の約半分がApple Watchユーザーです。
掲載元:MMD研究所 https://mmdlabo.jp/
しかし、Amazonでは「AppleじゃないWatch」がよく売れています。Amazonにおけるスマートウォッチの売れ行きは以下の通りになります。
※GROOVE 2021年4月調べ
上記の順位はAmazonで売れているスマートウォッチのブランドですが、市場で売れているブランドと全く異なることは一目瞭然です。
ここで気になるのがなぜこのようなことが起きているのか、です。
これが分かるとAmazonで”成果を出すコツ”が見えてきます。
Amazon戦略
Amazonで商品を展開していくためには、「オフラインの市場とAmazon市場は異なる」ということを理解しておく必要があります。
Amazonでは、ブランドが有名であれば有名であるほど有利というわけではありません。
次からはスマートウォッチを例に、Amazonで商品が売れる特徴を3つ確認していきましょう。
「多機能」より「低価格」
AmazonでもApple Watchは売れているものの、Appleではないスマートウォッチの売れ行きも非常に良いです。理由はシンプルで「Apple Watchほどの機能は要らない」という理由が大半であると考えられます。
「Apple Watchほどの機能は要らない」と考える人が多い理由として、価格が大きく関係しています。
Apple Watch SEの価格は約35,000〜40,000円。対して、YAMAY、KYOKA、Xiaomiのスマートウォッチは5,000円前後で購入できます。
これらのスマートウォッチを選ぶ人の中には「ヘルスケア系、スポーツ系が欲しいけど多機能は要らない」「低価格で抑えたい」と考えている人が多く含まれています。
YAMAYのレビューを概観すると、約3割の人が「初めてスマートウォッチを買いました」とコメントしています。
つまり、スマートウォッチデビューする人の多くが、AmazonでYAMAYを購入する傾向にあるのです。またYAMAYのスマートウォッチはバンドの色を選択できるため、そのような工夫も女性を惹きつけていると考えられます。
Amazonのアルゴリズム
前述したように、日本市場でのスマートウォッチの売れ行きはApple Watch、SONY、CASIO、HUAWEIの順ですが、Amazon市場ではYAMAY、KYOKA、Xiaomi、HUAWEIの順になります。
その理由はAmazonの特殊なロジック、及びAmazonのアルゴリズムが影響しています。
Amazonのアルゴリズムには過去の販売数が大きく関わっており、過去にどの程度売れているかをベースにして検索結果を表示しています。
例えば、「Apple Watchは要らないけれど、最低限のスマートウォッチを何か買いたい」というユーザーは「スマートウォッチ」というビッグキーワードを検索します。「スマートウォッチ」というキーワードはAmazonにおける月間の検索ボリュームランキングで10位以内に入っています。
そのため、「スマートウォッチ」はAmazonでトップ10に入るほどの検索ボリュームとなり、過去の販売数が非常に多いYAMAYの製品がトップに出てきます。
一般論でいうと、単価の安い物の方が高単価の物よりも売れやすい傾向にあります。YAMAYは安く、かつ高品質の物を製造し「失敗しないものを一旦買いたい」という層の人たちにAmazonでアプローチしています。
YAMAYのスマートウォッチの質が良いことは確かであり、Amazonのレビュー欄のユーザー評価も高いです。高い品質のスマートウォッチを4000円、5000円で製造しているところに、YAMAYの成功のコツがあるといえるでしょう。
フェアバリュー
消費者には「低価格には低品質が見合っているよね」「中価格には中品質」「高価格には高品質であるべき」というフェアバリューラインがあります。Amazonでよく売れる商品は、低価格の中品質、もしくは中価格の高品質です。
ユーザーは値段以上、あるいはフェアバリュー以上の価値の物を買いたいという思いもありますが、Amazonでは金額ベースよりも個数ベースで結果が表示されるため、低価格、または中価格の商品が売れやすくなります。
高価格・高品質、または高価格・超高品質という商品をAmazonで売ろうとすると難しくなります。日本のものづくりをアップデートすること、クオリティの高いものを売ることも重要ですが、Amazonではオーバースペックになりがちです。
そのため、Amazonで販売個数を上げるには、低価格、もしくは中価格の商品でフェアバリュー以上の物を販売することが重要といえます。YAMAYのスマートウォッチは低価格、中品質であり、適正価格以上のものを十分に出しているからこそ多く売れています。
まとめ
本記事では、スマートウォッチを題材にAmazon市場と日本市場の特徴の違いを説明してきました。
Amazonで商品を売るためには、良心的な価格で必要最低限の機能が搭載されている中品質の商品を求めるユーザーのニーズに応えることが大切です。
しかし、Amazonのアルゴリズムは金額ベースではなく、個数で成り立っているため、低価格から中価格の商品が売れやすいという傾向も抑えておくと良いでしょう。
Amazonで今後商品開発を行う際には、本記事で紹介したことを念頭に置いて参入の検討、及び戦略を練っていくのが良いと考えられます。