いまさら聞けないD2Cとは?

皆さんはD2Cをどのように定義しているでしょうか。さまざまな方面で少しずつ異なる定義がされているので、正しく理解できていない方が多いかもしれません。

私自身、D2CブランドをAmazonで販売しており、年間30億円ほどの売上があります。Amazon D2Cといってもいろいろなパターンがあり、純粋なD2Cとの違いについても意見が分かれています。

今回は、ネット通販・D2C業界の現状を整理するとともに、D2Cの定義やそもそもD2Cが流行った理由、D2Cの特徴について解説します。

 

 

D2Cとは

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Wikipediaによると、D2Cとは「中間流通業者を通さずに、自社のECサイトを通じて製品を顧客に直接販売すること」と定義されています。また、D2Cブランドとして有名な「BULK HOMME(バルクオム)」の経営者である野口さんは、ブランドづくりから消費者による購入や商品の提供までを含めた「あらゆるプロセスが全てデジタルで完結している」ことがD2Cの特徴だとしています。

上記の定義も正しいと思いますが、私なりのD2Cの定義は「中間流通業者を通さずに、“主に”ネット通販を通して消費者に直接販売をすること」です。

私たちはAINEXT(アイネクスト)という会社で、商品をAmazonや自社サイト経由で販売しています。売上としては全体で約30億円ですが、Amazonでの売上が圧倒的に高い比率になっています。

Amazonでの販売比率が高いからといって、私たちのビジネスがD2Cではないのかというとそうではありません。重要なのは「中間流通業者を通さない」という点です。

従来であれば、メーカーから問屋、小売店、消費者の順に商品は流通します。しかし私たちのビジネスモデルでは、基本的に自社がメーカーであり、Amazonや自社サイトが小売店の機能を果たして消費者に商品をお届けしています。

マーケティング施策として、コールセンターやカスタマーサービスにおけるやりとりも自社で行い、お客様の情報収集をしているという点も特徴です。

私たちは直接消費者とのやりとりもするので、D2Cの定義としてWikipediaに書かれているような「自社のECサイトを通じて」販売するという点は必ずしも必要ではないと考えています。

 

多様化するD2C


私がD2Cだと考えるビジネスやブランドを以下のマップにまとめました。カオスマップという形でさまざまなカテゴリーやジャンルのD2Cブランドを集めています。

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前述したBULK HOMMEはメンズコスメとして有名なブランドです。Anker(アンカー)はモバイルバッテリーなど電化製品のD2Cブランドです。

BASE FOOD(ベースフード)は食品のD2Cブランドで、完全栄養食としてパンやパスタを販売しています。ほかにはのむシリカや、私たちの会社で扱うFITBOX(フィットボックス)というエクササイズバイクもD2Cだと捉えています。

上記のカオスマップには、すでに知っている、または買ったことのあるブランドが入っているのではないでしょうか。国内だけでもすでに豊富なD2Cブランドがあります。

 

D2Cが流行った理由


ではなぜ、D2C業界がここまで賑わっているのでしょうか。その理由は、2つあります。

1つ目は、2017年頃に金融業界・投資サイドから着目されたことが背景だといわれています。投資という観点では「ビジネスモデルとしてそもそも儲かるのか」という部分が重要な着目点でした。

基本的にD2Cビジネスはサブスクと呼ばれる定期購買をベースとしているため、将来的にどれくらい販売が見込めるかというビジネスプランを立てやすい事業モデルになっています。一時的に赤字になったとしてもユーザーさえしっかり獲得できれば、その後にコストカットや広告停止を行っても継続購入によって売上を見込めるからです。

ビジネスプランを立てやすいため、投資家からお金が集まりやすく、結果的にD2Cブランドが立ち上がりやすいのです。この潮流はアメリカから来ており、日本でもD2Cブランドが広まる背景となりました。

2つ目は、SNSです。YouTube・Instagram・Facebookなど、少額のプロモーション予算でも十分にユーザーを確保できるようなマーケティングチャネルや戦術を使える人が増えてきました。

マーケティングサイドのスキルアップや環境整備があったからこそ、投資面とマーケティング面の2つが組み合わさり、D2C業界が盛り上がってきたのではないかと考えられます。

 

D2Cの特徴


そんなD2C事業には、以下4つの特徴・メリットがあります。

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マージンが浮きやすい

D2Cの一番の特徴といえるのが、中間業者を挟まないためマージンが浮きやすいという点です。マージンとは、流通段階で発生する収益で、粗利益に該当します。

これまでは、メーカー・問屋・小売店・消費者という4者による構成が、日本国内の流通モデルとしては一般的でした。

しかし、D2Cではメーカーが直接販売したり、ECモールとしてAmazonや楽天経由で販売したりするなど、ほぼダイレクトにユーザーへ届けられるようになりました。直接販売によって、D2Cではマージンが浮きやすくなっているのです。

しかし、マージンの浮きやすさはD2Cの特徴としてよく挙げられるものの、より本質的な価値は残り3つの特徴にあると考えています。

 

情報サイクルが早い

D2Cでは、ユーザーに商品の情報を伝えたり、購入者のコメントやフィードバックをメーカーが得たりといった情報のサイクルがとても早くなっています。

従来のビジネスモデルであれば、メーカーが新商品を発売する際にはテレビCMなどで大々的に広告・キャンペーンを打つのが一般的でした。そしてメーカー・問屋・小売店の順に流通し、最終的に店舗で商品が購入されます。

購入後に何かトラブルやクレームがあれば、小売店にフィードバックが入ります。そして小売店はメーカーと直接取引をしていないため、クレームを問屋に伝えます。しかし、情報を受け取った問屋がメーカーにフィードバックするケースはほとんどないというのが現状です。

また、CMを打つような大きな企業のマーケティング部署は、発売して半年〜1年経ち、商品がある程度浸透したあとに街頭インタビューなどで調査をします。情報のサイクルとしては非常に遅いといえるでしょう。

しかしD2Cの場合、購入後に何かあればAmazonレビューによって良い情報も悪い情報もすぐにフィードバックされるなど、情報の伝達サイクルが圧倒的に早いという特徴があります。

 

マーケットインしやすい

3つ目のメリット・特徴は、マーケットインしやすいところです。マーケットインとは、消費者の意見を起点に商品を開発し、顕在的なニーズを満たすアプローチのことです。

従来のビジネスモデルで大きなメーカーが商品を発売する場合、ユーザーのニーズに合わせなくても、一旦店舗に置いてしまえばある程度売れるといった見込みが立ちます。広告費を10億円使って宣伝すればこれくらいの人口はカバーできる、問屋経由で2万店の小売店に商品を10個ずつ置けば20万個は売れる、などといったイメージです。 

新商品のウケが良いか悪いかは、発売したあとに判断します。とくにコンビニの新商品は、お茶やジュースなどどんどん入れ替わります。商品が当たれば続けるし、当たらなければ次の商品を投入するというのが大きなメーカーの基本的な戦い方です。

一方でD2Cブランドの良さは、お客様のニーズに対して商品を開発・販売するというアプローチができる点です。

小さく始めざるを得ないというスタートアップ的な要素もありますが、「このニーズに対しては確実に応えられる」というところから販売を開始するのが強みだといえます。特定のニーズを持ったユーザーが見ているInstagramやFacebookなど、SNSに広告を出して販売を始めることが可能です。

 

価格統制・ブランドコントロールしやすい

ブランドを育成していくにあたって、メーカーが売りたい価格を維持するというのはすごく大事です。中間業者が力を持ちすぎている場合、メーカーは自分たちが売りたい価格やタイミングで売れないことがあります。

以前、ZOZOTOWNで販売していたブランドが10%OFFキャンペーンをしていました。そのブランドは通常のオフィシャルサイトではそのようなキャンペーンを実施していなかったため、ZOZOでのみ10%OFFで買えてしまうという状況になっていたのです。ZOZOはそのブランドに対して割引の許可を取ることなくキャンペーンを行っており、ブランドを守るという観点において議論が起こりました。

ZOZOTOWNのような強すぎる中間業者・小売業者がいる場合、ブランド側が自分たちの価格を統制できない可能性があります。価格統制・ブランドコントロールの観点でも、自社ECやAmazon・楽天など自分たちで価格を設定できる点はD2Cのメリット・良さだといえます。

 

まとめ

今回はD2Cの定義やビジネスモデルとして流行った理由、特徴について解説しました。さまざまな人がさまざまな形でD2Cを定義していますが、私はすべて合っていると思います。

ただ少なくとも、D2Cは「中間業者がいないからマージンが浮きやすい」というような単純なものではありません。前述したように情報伝達サイクルの早さや、マーケットインのしやすさ、そして価格統制・ブランドコントロールのしやすさこそがD2Cの特徴であり、本質的な価値だと捉えています。



◆詳しくはたなけんのEC大学の解説も参考にしてください!


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