Amazonと自社サイトの戦略の違い

自社サイトで単品通販をしているなら、その商品をAmazonでも販売できないかと検討したくなるものです。

しかし、単品通販(自社サイト)とAmazonでは、戦い方や想定されるユーザーが異なります。そのため、同じブランドを単品通販・Amazonの双方で展開するのは難しいケースが多いです。メンズスキンケアのBULK HOMME(バルクオム)のようにうまくいった事例もありますが、ケースとしては珍しいでしょう。

Amazonと自社サイトではビジネスモデルが違うため、ユーザー特性や市場へのアプローチなど、それぞれの市場に合わせていく必要があります。今回は、Amazonと自社サイトを使い分け、うまく活用するための戦略について解説していきます。

 

 

ビジネスモデル


まずは、Amazonと自社サイトにおけるビジネスモデルの違いについて見ていきましょう。それぞれの特徴や違いを活用することが、売上アップにつながります。

 

自社サイトでのビジネスモデル

自社サイトにおける単品通販なら、以下3つの要素でシミュレーションすることが多いでしょう。

  • CPA(Cost Per Acquisition:1件の成約にかかる広告費)
  • LTV(Life Time Value:一人の顧客が最終的にもたらす利益)
  • 商品単価

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たとえば以下のような設定なら、4ヶ月目頃からは黒字化が見込めます。

  • CPA: 8,000~12,000円
  • LTV: 15,000~32,000円(3~4ヶ月)
  • 商品単価: 5,000~8,000円

 

Amazonでのビジネスモデル

一方Amazonでは、基本的には「ビッグキーワード」といわれる検索エンジンなどでの検索回数が多いワードでどれだけポジションが取れるか、というSEO(検索上位を目指すための施策)の勝負になります。

たとえば「シャンプー」で検索すると、いわゆるナショナルブランドであるメリットのような商品を含めて色々な製品が出てくるでしょう。

「シャンプー」というキーワードに対してAmazon上で1ページ目や2ページ目に表示されれば、広告なしでも十分売れるポジションになっています。

しかし、Amazonでポジションを得るために投じた広告費は、外部からはわかりません。Amazonで長く商品販売をしていると、市場規模・投資金額・売上見込の予測が立つようになるので、それを元にビジネスとして戦略を立てていくのです。

「3ヶ月~半年ほど、この広告の出し方や実績作りができれば、検索結果上このポジションは取れる」という見込みを立て、その時点でPL(損益)がどうなるかを精査します。

「売上から原価を差し引いて1億円残るのであれば、1億円かけてSEOのポジションを取ればいい」といった物差しで測ります。

このように、自社サイトとAmazonにおけるビジネスモデルには大きな違いがあるのです。

 

ユーザー特性


次にユーザー特性の違いについて、フェアバリューラインを使って説明します。

横軸が価格、縦軸が品質とした場合、一般的にユーザーは価格に見合った品質を求めるため、フェアなバリューのラインが存在します。

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Amazonにおいては、いかにそのフェアな期待値を超えるか、価格に対してより品質の良い商品を出すためにどうすべきかという戦いになるのです。とくに低~中価格帯が主戦場になっており、その背景として以下2つの要素が挙げられます。

1つ目は、Amazonでは「出荷金額ベース」ではなく「出荷個数ベース」で検索順位が並び替えられている点です。単価の安い商品の方がよく出荷されるため、検索順位も上がりやすくなります。

2つ目は、そもそもAmazonという市場は「顕在ニーズ/潜在ニーズ」のうち顕在ニーズが大部分を占める市場という点です。「シャンプーが欲しい」というニーズが顕在化したとき、ユーザーはAmazonのサイトを訪問します。

「髪質を改善したい」といった悩みを持つユーザーは、Amazonでは検索しません。悩みを抱えている場合は、「フケ 防止 シャンプー」のようにピンポイントでキーワード検索するユーザーが多いでしょう。

たとえば、コスメやシャンプーなどのコンプレックス商材を単品通販で売る場合、シャンプーとトリートメントのセットであれば5,000~8,000円程度の価格設定が一般的です。しかし、Amazonで同じ商品・価格で展開してもあまり売れないでしょう。

市場の違いや特性をしっかり理解したうえで、Amazonでの参入方法を考える必要があります。

 

市場へのアプローチ


続いて、市場へのアプローチにおける違いについてです。たとえば「フケ」に関する悩みの市場をECで取りたい場合、単品通販(自社サイト)とAmazonのどちらがアプローチとしてよいのかという検討が必要になります。

結論としてはどちらもアリですが、市場によって性格が異なる点は注意が必要です。

私たちはAmazonでの販売が得意なので、最初からAmazonで売ることを前提としています。市場感よりも自分たちのケイパビリティ(競合より優位に立てるポイント)をベースに戦略を組み立てているので、まずはAmazonで売り始めたあと、結果的にEC全体で取れる市場を考えるという発想です。

逆にものづくりが得意な企業であれば、単品通販とAmazonを比較検討する必要があるでしょう。

たとえば、プロテイン市場はオンライン購入の割合が20~40%と高いです。一般的な商品のEC化率が10%弱なので、かなり高い比率だといえるでしょう。さらにオンライン購入の中でもAmazonの比率が高いなら、Amazonでの販売は避けて通れないという結論になります。

しかし、プロテイン以外の市場では状況が異なります。潜在ニーズ系の商品は抽象的なキーワードで検索されることが多いため、とくにお悩み系のキーワードは単品通販の方が戦いやすいでしょう。

Amazonはキーワードや成分が市場に広まりきった段階に適しているため、市場が顕在化したタイミングでAmazonを一気に攻めるのも考え方としてアリです。

プロテインは商品特性上、重量があるため店舗へ何度も買いに行くのは面倒です。Amazonなら自宅まで届けてくれるので、そのような便利さもAmazonが選ばれている理由でしょう。

もちろん単品通販でプロテインを買う方もいます。しかし、以下のフェアバリューラインでいえば、Amazonではいかに低価格低品質、中価格中品質に合わせられるか、そしてその少し上のポジションを狙えるかが重要です。そのため、コスト構造の強さが事業全体のケイパビリティになります。

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単品通販の場合は少し異なり、マーケティングサイドの強さが事業全体に影響します。アフィリエイターやインフルエンサーなどを使った広告運用が、ビジネス全体の強さになっているのです。

単品通販において、販売価格5,000円、原価1,000円の商品があったとします。原価を800円に下げたところで大きな影響はないため、それよりもCPAを下げる・LTVを長くすることに頭を使うべきです。

しかし、Amazonで最終的に利益を取るフェーズでは、オーガニック市場でSEOが取れており、PLの黒字化が成立している状態を作る必要があります。その場合、原価200円の差額は大きな違いとなります。

Amazonで成功しているのは、製造面に対してコストを詰めたうえで、フェアバリューラインの低~中価格・低~中品質の領域を取れているプレーヤーです。一方単品通販で成功しているのは、高価格・中品質の領域でうまく見せ方を調整しているプレーヤーでしょう。

単品通販で成功したプレーヤーがAmazonにシフトした場合、原価構造的には単価を下げられたとしても、同じブランドでは従来のお客さんとのカニバリ(自社の店舗や事業同士で競合してしまうこと)やハレーション(悪影響による二次被害)のリスクがあります。リスクを回避するには、ブランドをズラす必要があるでしょう。

実際のところ、中身を変えずにブランドだけ変更して成功している企業もあります。たとえば、単品通販では10,000円で売っている商品のブランドだけを変更して、Amazonでは4,000円で販売しているといったイメージです。

単品通販からAmazonに広げる際には、同じ戦い方ではなく自社が今まで築き上げてきたサプライチェーン上の強みを生かして、Amazonで戦える市場を選ぶというアプローチがよいでしょう。

 

まとめ


今回は、Amazonと自社サイトにおける戦略の違いについて、ビジネスモデルやユーザー特性、市場へのアプローチといった観点で解説しました。

まずはAmazonと自社サイトにおけるビジネスモデルの違いをしっかり理解しましょう。ユーザーは顕在ニーズと潜在ニーズどちらを抱えているのか見極めたうえで、商品・価格・品質を決定する必要があります。

自社の強みがコスト構造なのかマーケティングなのかを明確にしたうえで、市場へのアプローチに取り組んでみてください。




◆詳しくはたなけんのEC大学の解説も参考にしてください!


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