3つの視点から比較する Amazonと楽天市場の違い

EC販売を始めるには、ネット通販市場について知る必要があります。日本のネット通販市場は約10.5兆円。そのうち、約半分のシェアをAmazonと楽天市場が占めています。つまり、Amazonと楽天市場についての知識を押さえれば、EC市場の半分を理解したも同然です。

この記事では、そんなAmazonと楽天市場の違いを、以下の3つの視点で解説します。

  • ・事業概要
  • ・UI(ユーザーインターフェース)
  • ・ビジネスモデルと社員の違い
  •  

出品したい商材や状況によって最適なプラットフォームが異なるので、これからEC販売を始めたい人は必読の内容です。

 

 

事業の概要

まずはAmazonと楽天市場の事業概要について解説します。

  Amazon 楽天市場
流通総額 3.3兆円 2.0兆円
出店舗数 約20万+1 約4.8万
得意ジャンル 本・家電・消費財
(型番商品)
食品・ファッション
(プライベートブランド)

※2019年GROOVE調べ

 

流通総額

2019年、Amazonの流通総額は3.3兆円、楽天市場は2.0兆円でした。(概算値)日本のEC市場規模が約10.5兆円なので、Amazonと楽天市場で約半分を占めていることになります。

それぞれの年成長率は、Amazonは約15%、楽天市場はほぼ横ばいという結果でした。日本全体のEC業界年成長率が約8%であることと比較すると、Amazonの成長率が抜きん出ている状況です。つまり、日本のEC業界では、これからAmazon比率が伸びていくことが予想されます。ただし、Amazonと楽天市場はそれぞれ出品されている商品ジャンルに差異があるので、年成長率だけで両者の優劣を判断することは避けた方が良いでしょう。

 

出店舗数

次に、Amazonと楽天市場の出店店舗について解説します。

Amazonの店舗数は約20万+1(Amazonの直販モデル)、楽天市場は約4.8万です。流通総額と合わせて見ると、Amazonより楽天市場の方が1店舗あたりの売上が多いことがうかがえます。

これは、それぞれに出店している販売者の層が違うためです。Amazonの出店舗数には個人の販売者も含まれているため、1店舗あたりの売上は少なくなっています。一方、楽天市場は出店審査も厳しく初期費用もかかるため、販売者はほとんど法人です。そのため、楽天市場の1店舗あたりの売上は多くなります。

Amazonは、一般企業や個人が出店するモール型の事業モデル以外に、Amazonが直接商品を販売する直販型モデルも展開しています。Amazon内での売上規模は、モール型と直販型が約1:1の比率です。

 

得意ジャンル

最後に、得意ジャンルについて解説します。

Amazonの得意ジャンルは、本・家電・消費財などの型番商品です。「スーパーやコンビニで売られているような商品をAmazonで安く買う」 「Amazonで買って自宅まで届けてもらう」というモデルに強みを持っています。

一方、楽天市場の得意ジャンルは、食品やファッションなどのプライベートブランド系商品です。楽天市場ではギフト系食品や、実店舗で見かけないようなプチプラなどがよく売れています。

このように、Amazonと楽天市場では、得意な商材やジャンルが異なっています。なぜこのような違いが生まれるのかというと、Amazonと楽天市場ではUI(ユーザーインターフェース)が異なるからです。

 

UI(ユーザーインターフェース)の違い

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Amazonと楽天市場では、UI(ユーザーインターフェース)に違いがあります。(UIとはサイト構成やデザインのようなものです。)

  Amazon 楽天市場
サイト構成 カタログ ショッピングモール
商品ページ シンプル・統一感 カスタム性が高い
カスタマージャーニー 検索・レコメンド 検索・広告・メルマガ

 

サイト構成

まず、サイト構成について解説します。

Amazonのサイト構成は、カタログを見せるような構成になっています。一方、楽天市場のサイト構成は、ショッピングモールのようになっていることが特徴です。

ある商品についてAmazonで型番検索すると、検索結果にはその商品を出品している店舗の中で最もオススメの店舗のページが1つだけ表示され、それに合わせて関連商品の情報が表示されます。

このようなサイト構成になっている理由は、Amazon特有のSDP(Single Detail Page)という考え方に基づいているためです。SDPとは「1ページ1商品」という理念のことで、Amazon創業者ジェフ・ベゾスの「Amazonには同じ商品ページ(Detail Page)は1ページ(Single)しか存在してはならない」という考え方が根底にあります。

一方、楽天市場で同様の検索をすると、その商品を出品しているそれぞれの店舗の商品ページが複数表示されます。

 

商品ページ

次に商品ページについて比較します。

楽天市場の場合、商品ページに画像を20枚、動画を1つ登録できるうえに、商品情報にHTML形式で画像を表示させることも可能です。それぞれの商品ページに特徴や効果、表彰歴など様々な情報を豊富に掲載できるため、どの商品を購入するか決めていない見込みユーザーに対しても訴求できます。楽天市場はショッピングモールのようなサイト構成なので、それぞれの店舗が商品ページを作りこめるよう、カスタム性の高い出品者寄りのUIと言えるでしょう。

一方、Amazonの場合、画像は9枚までしか登録できず(モバイルの場合は7枚まで表示)、掲載できる情報が限られているので、見込み客に対する訴求には向いていません。そのため、Amazonユーザーは、Amazonに訪問する前に購入する商品が決まっている場合が多いです。Amazonはカタログのようなサイト構成なので、買いたい商品が決まっているユーザーに便利なUIと言えます。

 

カスタマージャーニー

最後にカスタマージャーニーについて解説します。

カスタマージャーニーとは、直訳すると「お客様の旅路」となるマーケティング用語の1つで、お客様がどのような経路をたどって商品の購入に至るのか、という購買行動のことを指します。

Amazonでは同じ商品ページは1つしか表示されず、それぞれのページはシンプルなため、「何を誰から買うか」という購買行動になります。そして、カスタマージャーニーは検索が60%、レコメンドが30%と、商品起点の入口が多いです。

一方、楽天市場では同じ商品ページが複数表示され、それぞれのページを作りこめるため、「誰から何を買うか」という購買行動になります。カスタマージャーニーは検索が40%、広告が30%、メルマガが10%と、店舗起点の入口が多くなっています。

 

ビジネスモデルと社員像の違い


ネット通販で自社の商品を販売する場合、Amazon・楽天市場への出品は避けて通れない道です。そのため、それぞれのプラットフォーム側の社員との付き合い方を知っておくことも重要です。

ここからは、Amazonと楽天市場の

  • 社員像
  • 収益源
  • 営業体制
  • 営業マンのKPI

について紹介します。

  Amazon 楽天市場
社員像 中途採用98%・他業界出身・EC未経験者も多い 新卒大量採用・知的体育会・外国人採用
収益源 成果報酬型(売上に対するロイヤリティ) 複合的フィーモデル(広告・月間出店料・ロイヤリティ)
営業体制 セルフサービス型 アカウントマネジメント型
営業マンのKPI 出品数・売上・店舗と営業マンの目的が一致 広告・売上・ECCの見極めや仲の良さが重要

 

社員像

まず、社員像について簡単に紹介します。

Amazonの社員は中途採用が98%、EC未経験で他業界から転職している人が多いです。一方、楽天市場は新卒大量採用の日本型採用モデルで、営業スキルを徹底的に鍛えられつつECについてもこなしていく知的体育会の雰囲気があります。また、外国人材の採用も積極的に行っています。

 

収益源

Amazonの収益源は、売上に対するロイヤリティ(8〜15%)の成果報酬型のモデルです。一方、楽天市場の収益源は、楽天市場に出稿する広告・月間出店料・売上に対するロイヤリティ(2〜7%)の複合的フィーモデルになります。

 

営業体制

Amazonは基本的にはセルフサービス型で、サポートが必要な店舗のみ営業がつきます。新規出店した1年目は手厚くサポートがつきますが、2年目以降はコールセンターとのやりとりになるなど、ビジネスドライな営業体制が特徴です。

一方、楽天市場は、全店舗に営業マンがつくアカウントマネジメント型です。それぞれの店舗にEコマースコンサルタント(ECC)がつき、それぞれの店舗との人間関係を重視した営業体制になります。地方にある店舗やネット通販に弱い店舗にも手厚くサポートしているため、ネット通販の裾野が広がりました。この点は、日本国内においてネット通販を盛り上げた楽天市場の功績と言えるでしょう。

 

営業マンのKPI(ノルマ)

営業マンとの関係性を良好にするためには、営業マンのKPI(ノルマ)を知っておくことが大切です。

Amazonの営業マンのKPIは出品数と売上となっており、出店店舗と営業マンの目標が一致していることが特徴です。それぞれの店舗で売れれば売れるほど営業マンの成果にもなるので、同じ方向を向いて努力できます。

一方、楽天市場の営業マンのKPIは広告と売上です。本来は売上を作るための広告ですが、楽天の営業マン(ECC)がノルマを達成するための広告を提案されることもあります。出品者にとって一番大切なのは売上ですので、広告のためだけにお金を使うことのないよう、ECCを見極め、上手に付き合っていくようにしましょう。

 

まとめ


Amazonと楽天市場は日本のEC市場で大きなシェアを占めるプラットフォームなので、どちらも同じという認識を持っているかもしれません。しかし、この記事で紹介したように、Amazonと楽天市場にはそれぞれ特徴があり、得意ジャンルやUI、ビジネスモデルに違いがあります。ECで販売を始める際は、出品したい商材・状況に合わせたプラットフォーム選びをしましょう。




◆詳しくはたなけんのEC大学の解説も参考にしてください!

3つの視点から比較!【Amazonと楽天って何が違う?前編】

知られざる社員像の違い!?【Amazonと楽天って何が違う?後編】

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