ほとんどのD2Cメーカーができていない、正しい成長戦略の描き方

自社のブランドを育てていくうえで、有名ブランドをベンチマークに設定することはあるでしょう。しかし、適切にベンチマークを選ばなければ、間違った目標設定につながる可能性があります。

今回は、ゼロからD2Cブランドを作る際、どのようにベンチマークを設定すべきなのか解説します。

 

 

成功事例をマネても売れないワケ


ゼロからブランドを作るとき、たとえば「ジェフ・ベゾスが今やっていること」をベンチマークにするのはおすすめしません。成功した事例を見るときは「なぜそれをやろうと思ったのか」を知ることが大切です。ジェフ・ベゾスの場合なら、なぜ彼がインターネット通販を始めようとしたのか、なぜAmazonは物流に特化しようとしたのか、といった点が重要になります。

Amazonの成功要因に物流や品揃え、プライムデーなどを挙げ、同じことを2倍の資金でやろうとしても成功は難しいでしょう。成果が出るかわからない段階で、成功した企業の経営者たちがどのように意思決定したのかを知ることが大事です。

 

正しいベンチマークの方法


D2C業界では、年間売上10億円以下のブランドが約98%を占めています。10億円以上は1.9%ほど、そして0.1%未満の数社のみが、INEやプレミアムアンチエイジング、Ankerといった巨大ブランドに成長しているといったイメージです。

0→1でビジネスを立ち上げようとするとき、これらの大成功したブランドの現状をベンチマークとするのは危険です。0→1のフェーズでは、「Ankerの売り上げが数億円しかなかったときに、どういう意思決定をしていたのか」「そのときのAmazonの市場はどうだったのか」といった観点でベンチマークを設定しましょう。

0→1、1→10、10→100とそれぞれの段階における成長戦略について、順番に解説していきます。

 

0→1の成長戦略


0→1の成長戦略には、主に2つのパターンがあります。

  • 先行者利益パターン
  • ハックパターン

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先行者利益パターン

バルクオムは、メンズコスメがなかった頃にメンズコスメブランドとして参入し、新しい市場をつくりました。Ankerも、当時モバイルバッテリーブランドがない中、自分たちで市場をつくりました。

バルクオムがメンズコスメの市場を作ったとき、資生堂もUnoを出してメンズコスメを販売する動きがありました。しかし、「メンズコスメといえば○○」とまで位置付けられるブランドはなかったのです。バルクオムはメンズ美容の市場が伸びると考え、完全な「メンズ専用」のブランドを作り上げました。

 

ハックパターン

0→1戦略の2つ目は、ハックパターンです。私たちはハックパターンを活用したことで、0→1から1→10のフェーズに進めたと考えています。

当時、Amazonでのプライベートブランド作りを全力でやっている企業・個人はいませんでした。戦術やノウハウが確立されていないため、自分たちで研究する必要があります。しかし研究さえすれば、モノづくりのレベルが高くなくても勝ててしまう時代だったのです。

競合が少なく、CPC(Cost Per Click:広告を1回クリックした際に発生する費用)やCPA(Cost Per Acquisition:1件のコンバージョンを獲得するのにかかった広告コスト)が低い中で、一気にブランド作りを進めました。

とあるブランドでは、ブログ広告を使って10億円レベルまで拡大した例があります。売上が拡大した頃には、ブログ広告は「ステマ」と呼ばれるようになりました。「ステマ」が問題視される前に、ブログ広告を使って一気に10億円規模まで伸ばしたのです。このように、新しいチャネルや戦術が開拓される瞬間に一気に取り組むのがハックパターンです。

0→1のビジネスでうまくいったケースの共通点は、競合が少ないという点でしょう。広く捉えれば常に競合はいますが、自分たちとまったく同じことをやっているプレイヤーがいないのです。コモディティ化(市場に出回っている商品が個性を失い、どのメーカーの商品を買っても大差がない状態)していない環境で戦えるため、CPCやCPAを安く抑えられる戦略です。

 

自社での事例

私たちが0→1の段階で行っていたマーケティング手法は、「他のプレイヤーとまったく違う情報リソースを使って戦う」ことでした。

当時のAmazonの商品ページはシンプルでした。メイン画像もサブ画像も白抜きの写真で、商品の画像を並べているだけで十分売れていたのです。しかし、楽天のサイトでは作り込まれた詳細な商品ページになっていました。

そこで、メイン画像はAmazonのルールに従って白抜き画像にしつつ、サブ画像は規約に違反しない範囲でLP(ランディングページ:検索結果や広告を経由して訪問者が最初にアクセスするページ)を作ることにしたのです。

当時、Amazonで同じような取り組みをしているプレイヤーはいませんでした。結果、「財布」と検索すれば自分たちの商品ページが一番上に表示されるようになり、副業でも1日50万円の売上を達成するまでになりました。

Amazonで「自分と同じ戦い方をしている人たちが使う情報リソース」ではなく、「他から情報を取り入れて効果の高い施策を探す」ことが、0→1のフェーズでやっていたことです。

 

1→10の成長戦略


1→10の成長戦略は、以下4つの方向性が挙げられます。

  • 他販路に展開する
  • カテゴリーを増やす
  • 組織化する
  • ブランドを築く

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他販路に展開する

10億円の売上を達成できた場合、次のステージに行きたいなら主戦場から外に出なければ頭打ちになりかねません。

しかし、「Amazonから楽天」のように新しい販路を開拓するには、これまでのやり方を踏襲するだけでは難しいでしょう。0→1のビジネスを1つ成功できたとしても、その成功要因を壊すぐらいのことが必要です。

経営陣がやるのか、外部のスペシャリストに入ってもらうのか、アプローチも再検討する必要があります。

 

カテゴリーを増やす

販路に加え、新規のカテゴリーに挑戦することも1→10を達成する一つの戦略になってきます。

 

組織化する

新しい販路を開拓するには、既存のビジネスを誰かに任せなければなりません。これまでの成功を新しいビジネスでも同じように展開できると考えるのは危険です。

既存のビジネスをデリゲーション(上司が自分の仕事の一部を部下に任せること)して、経営陣でないプレイヤーでも業務を回せるようにしなければなりません。新しいカテゴリーや販路に投資するなら、同じ経営陣で取り組むのか、スペシャリストに任せるのかを決める必要があります。

 

ブランドを築く

0→1の段階では、インプレッションさえ獲得できれば顧客に商品を見てもらえます。よいクリエイティブを作っていれば顧客は満足し、リピートにつながるでしょう。その繰り返しによってブランドが築かれていきます。

D2C領域のブランドとは、「○○といえば△△」というようにそのカテゴリーでパッと思いつく存在になることだと考えます。「アマゾンのD2CブランドといえばAnker」といったような存在です。

ブランドの地位を築く方法としてわかりやすいのは、Amazonでベストセラーを獲得することです。ブランドを知らない人でも、ベストセラーや1位と書かれていれば「これが売れているんだな」と理解してもらえます。

 

10→100の成長戦略


10億円や100億円以上の規模、いわゆるナショナルブランドと同等レベルに達するには何が必要でしょうか。

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上場した会社の例を見ると、マスメディア広告を使って、テレビでも見るような存在になっていることが共通点として挙げられます。バルクオムは木村拓哉さんを、プレミアムアンチエイジングはKinki Kidsさんを起用しています。

コスメであれば、資生堂と並ぶような戦術をとっていくことが必要です。しかし、「資生堂と何が違うの?」という点を意識し、商品・ブランドを選んでもらう理由付けが必要になってきます。

10→100のフェーズに入った少数のブランドは、ナショナルブランドさえも実施していないような施策やオペレーションを構築する必要があるでしょう。カスタマーに対するコミュニケーションを発展させる必要があるほか、人材も強化していかなければなりません。

人材強化のためには、採用面にも注力していく必要があります。0→1フェーズでは、大学の後輩や地元の友達など、リファーラル採用(従業員が持つネットワークで人材を採用すること)が多いでしょう。そして、1→10フェーズでは業界に興味がある人材を迎え入れていきます。

10→100フェーズになると、D2C経験はないが高学歴という人材や、中間管理職に適した人材を採用します。しかし、有名大学を卒業した人にとっては、たとえばPanasonicとAnkerがある中で後者を就職先の候補にすることは少ないでしょう。

そのような状況に食い込むアプローチとして、経営陣が本を出したり、テレビやセミナー、マスメディアに出たりといった方法が考えられます。

 

まとめ


今回は、D2C事業における正しい成長戦略の描き方を解説しました。

0→1でビジネスを立ち上げる際には、参考にする成功事例が自分たちのフェーズに見合っているのか、再現性があるのかを考えたうえで正しいベンチマークを設定する必要があります。

実戦で役立つような「生々しい情報」はあまり落ちておらず、Web記事や本で集められるのはきれいにまとめられた情報がほとんどです。正しいベンチマークを設定するためには、アナログに残っている質のよい情報を意識して集めるのがいいでしょう。




◆詳しくはたなけんのEC大学の解説も参考にしてください!


98%のD2Cメーカーができていない、正しい成長戦略のパクり方


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