製紙業から生まれた「環境に優しいD2Cモノづくり企業」の意外な成長戦略とは?
紺屋商事株式会社 様
右から:紺屋商事株式会社 取締役部長 石井様/GROOVE コンサルティング事業部 三澤
紺屋商事株式会社様は、各種梱包資材から手芸用紙バンドまで、幅広い商品の企画・開発・販売を行っている企業です。2016年の設立当初から「環境に優しいD2Cモノづくり企業」として、環境にやさしいプラスチックとの付き合い方や、紙などの天然素材への置き換え方を商品を通して提案されています。
GROOVEでは、紺屋商事様のAmazon運用パートナーとして、ストア構築から広告運用、そしてセール対策まで、トータルでサポートさせていただいています。
今回のインタビューでは、紺屋商事様が法人や卸向けを中心としたBtoB事業から、新たに一般消費者向けのEC販売事業を開始し、それを成功へと導いた背景について詳しくお話を伺いました。
創業の目的:BtoBが中心の製紙業から生まれた、環境に優しいD2Cモノづくり企業
- まずは紺屋商事様の事業内容について教えてください。
当社は成り立ちとして、紺屋製紙株式会社という創業60年以上の歴史がある製紙メーカーが母体になっています。この紺屋製紙株式会社は、古くから製紙業が盛んな静岡県富士市を中心に、製紙工場・加工所などを展開し、製紙、産業用紙・ペーパータオルを中心とした家庭紙、手芸クラフト用の紙バンドなどを製造・加工している会社です。
メーカーとして製造している商品ジャンルは実に幅が広く、BtoBの取引先は、医療、飲食、物流から建設業まで多岐に及びます。こうした既存のBtoB取引は大切にしながらも、紙という天然素材の可能性を追求し、環境に配慮した製品を「D2Cという手法」で販売するために、紺屋商事株式会社を設立しました。
- では創業当初からD2Cによる展開が中心にあったのですね。
そうですね。もちろん取り扱っている商品の特性から、オフラインでの販売も売上としては大きいのですが、当社が掲げる「脱プラスチック製品開発メーカー」というコンセプトが活きるのは「EC販売ストア事業」だと考えているので、軸足はこちらに置いて展開しています。
EC販売ストア事業は、Amazonだけでなく、楽天市場、そして自社ECサイトまで運用しています。ECだからと言って、個人のお客様だけではなく、小売店や法人からの発注も多いのが特徴ですね。
- 梱包資材から手芸用まで、実に幅広い商品展開がありますね。
関連会社である紺屋製紙株式会社は、世の中で「SDGs」が声高に叫ばれる以前から、環境負荷の軽減について、積極的に取り組んできました。
そうした取り組みの中から「リサイクル可能な紙という天然素材の可能性」を引き出すことで、脱プラスチックに貢献する商品が、多数生まれてきたのです。
基本の戦略:専門性が必要なEC運用はプロに任せることで、商品企画に集中
- Amazon運用に関して、GROOVEを外部パートナーに選んでいただいたのはどのような経緯からでしょうか?
EC販売ストア事業を展開する上で、Amazonは重要な販売チャネルになっています。当初はAmazon側からアプローチがあり、ベンダーセントラルでの販売をスタートさせました。
おかげさまで順調に売上は伸びていったのですが、当社の場合は取扱商品数が1000種以上もあり、もう普通に運用するだけで手一杯な状態になったのです。
しっかり運用しようと考えると、とにかく工数が多くて、価格を調べる、他社製品を調べる、カテゴリーを調べる、などなど自社でやり切るには限界を感じていました。そのため、さらにAmazonで売上を伸ばすには、社内で部署を持って教育するのではなく、外部にパートナーを持った方が良いと考えて、複数の運用支援会社から提案を受けた結果、GROOVEに依頼しました。
もちろん「自社内にマーケティングチームを作る」という選択肢もあったのですが、自社で人を採用し、教育して、知見が貯まっていくスピードよりも、Amazonというモールの進化の方が早いと認識しています。
どこまで行っても追いつかないのであれば、はっきりと内製化しないという決断をした方が賢明だと考えたのです。今ではその時の認識と決断は正しかったと言い切れますね。
- GROOVEによるAmazon運用は、貴社にどのような価値を提供できているでしょうか?
GROOVEと契約する前は、Amazonでの広告運用は行っていませんでした。広告を入れなくても売上は伸び続けていたんですね。その状態から、もう一歩踏み込んで伸ばしていくには何が必要か?という話を当時のAmazonベンダーマネージャーと相談した際に、「やはり広告運用ですね」となって。さすがに広告運用まで自社で回すのは難しいと判断し、これがパートナー探しのきっかけになりました。
今では広告運用に限らず、Amazonでの販売に関わる、ほとんどの業務をGROOVEにサポートしてもらっています。
「どのような価値提供」と聞かれても、もう本当に役に立たないものがないぐらい、Amazonに関しては何でもやってもらってますね。例えば戦略設計や広告運用などによる売上サポートに加え、利益率の改善を目的にセラーセントラルへの商品移管もサポートいただき、現在ではセラーセントラルでも多数の商品を展開するようになっています。
契約する以前の体制で運用を続けていたとしても、売上をアップさせる方法としては「価格調整」しかなかったと思います。しかし、おかげさまで今では利益管理をしながら広告も展開し、さらにページの品質もどんどん上げていただいています。
常に「課題感」も共有してくれて、その課題を解決するためのKPIも、しっかりと示してくれる。この辺りはさすがに「Amazonのプロ」だなと思います。
また年々重要度が増しているAmazonでのセール対策ですが、社内で運用していたころは、取り組んだこともありませんでした。これについてもGROOVEにサポートしていただくことで、「本当にセールで売り上げが伸びる!」ということを、会社として実感できたというのは大きな成果でしたね。
- 他にもAmazon運用における、ビジネス全体への副次的な効果はあるでしょうか?
これについては「ベストセラーバッジの獲得」ですね。もちろんAmazonでの売上においても、このベストセラー獲得は重要な意味を持っているのですが、実はオフラインでのBtoBビジネスにも効果を発揮してくれています。
当社は生活雑貨の展示会に出展することもあるのですが、ベストセラーを獲得できるようになってからは、ブースへ足を運んでくれるお客様がすごく増えてきました。ベストセラーだけではなく、「Amazonおすすめ」やランキングでの上位表示などを継続的に獲得することで、ECモール上で「人気のショップ」としてブランド認知されてきたのだと感じますね。
またビジネス全体への効果というと、GROOVEにAmazon運用を任せることで、メーカーとして集中すべき「商品の企画・開発」に専念する時間を増やすことができました。専門家同士が、お互いの得意分野で結果を出して持ち寄ることが、そのままシンプルな成長戦略になると思っています。
更なる成長:多様化するニーズに、新たな提案で応える
- 着実に成長を続ける貴社のEC事業ですが、さらなる成長のチャンスはどこにあると考えていますか?
これまで通り、基本は変わらずに新しい商品をどんどん提案し続けたいと考えています。それが私たちにとって、継続的な成長に向けた、一番効果的なアクションです。
それと、当社が、というか私が、D2Cでの商品企画・開発においてひとつの「キーワード」を設けているんです。それは「ペルソナ設定を敢えて行わない」ということです。マーケティング戦略を立案する上で「ペルソナ設定」は重要とされているので、ちょっと意外に思われるかも知れませんね。
私にとっての「物販」が目指すところは、電力会社や水道局のような存在です。老若男女、性別年齢問わず、全ての人が365日使うもの。これが商売になると思ってるので、あえてターゲットを絞らないようにしています。ペルソナ設定とは真逆のアプローチですが、どんな人でも、は極端であって、より多くの人に、毎日使っていただける、そんな商品作りを心がけています。
- より多くの人にとって“必需品”といえる商品を開発する、ということですね。
そうですね。当社の数ある商品の中でも、「再生紙100%のタオルペーパー」は、このアプローチに近い商品だと思います。衛生的であることが求められる医療や飲食の現場だけでなく、一般の家庭でも必要とされている商品です。
他にもAmazonベストセラーを獲得している「ぐるぐるラップ(ハンディラップ ストレッチフィルム)」は、本来は物流倉庫など特定の場所でしか必要とされていなかった業務用商品ですが、入り数を変えた仕様を設定したことで、一般の家庭でも使っていただける商品になりました。国内でのEC流通が拡大する中で、梱包して発送する側の人にも、受け取った側の人が段ボールをまとめる用途にも、どちらにも必要とされることがレビューから読み取ることができます。
当社はメーカーであり、物流の機能も持っているので、新しいアイデアに、サイズや数量といった要素もプラスして新商品を企画することができます。今後も世の中のニーズの変化に合わせて、フレキシブルに、スピーディーに新商品を送り出していきたいと思います。
未来への展望: EC事業を通して、新しいアイデアをテストし続けたい
- 今後、GROOVEに期待する業務領域はどのようなものがあるでしょうか?
当社のベースにある製紙業というのは、歴史があると同時に、どうしても革新性に欠ける業界だと思います。しかし、そんな中でも「最先端であり続けること」が当社の企業価値であると認識しています。
それこそが唯一、大手と渡り合える対抗手段なので、今後も「新しいもの」を送り出すことに意欲的に取り組んでいきたい。その「新しいもの」をGROOVEと一緒にAmazonというプラットフォームへ送り出して、どんどんテストマーケティングを回していきたいですね。
Amazonでの販売から得られるレビューを含めたデータをもとに、今度はそれを他のオフライン販路にどんどん落としていくことによって、これまでにはなかった売上と利益を生み出す。今ではこんな骨組みが見えてきました。このスタイルをGROOVEと一緒に、引き続き推し進めていきたいと思っています。
それともう一つ、Amazon運用については、GROOVEがしっかりとサポートしてくださっているのですが、EC事業全体を更に伸ばしていこうと考えると、モール内での広告運用だけでは厳しくなると考えています。
ECモール内広告のクリック単価は、全般的に上昇傾向にあると思います。楽天市場はAmazonよりもさらにその傾向が顕著です。それなら外部流入を稼げるInstagramなどのSNS広告にも、適切に費用を振り分けて最適化を図りたい。
ですので、当社のことを良く理解してくれているGROOVEに、SNS運用を広告も含めてサポートしてもらえると、ありがたいなと思います。
編集後記:クライアントのビジネス全体にも貢献する、ECのトータル運用代行を目指す
商品企画・開発において、明確なポリシーを持ったD2Cメーカーである紺屋商事様。GROOVEは、Amazon運用パートナーとして、ストア構築から広告運用、そしてセール対策まで、トータルでサポートさせていただいています。
今回のインタビューを通して、私たちがAmazon運用代行において、最優先でコミットするべきは「しっかりと利益を出しながら、売上を拡大する」であると再認識しました。同時に、この約束をパートナーシップの前提条件とすることで、クライアントが新しいアイデアを形にする時間を提供することができると感じました。
さらに、そこから生まれた新しい商品をAmazonというプラットフォームに送り出し、売上や販売個数の推移、レビュー分析などのデータをフィードバックすることが、次なる商品企画につながって行く。
お互いがお互いの領域でプロフェッショナルとしての役割を果たすという、シンプルでありながら、ビジネスの成長に欠かせない信頼関係のループを、しっかりと繋いでいきたいと考えています。