Amazonにおける動画広告の活用方法

EC市場の競争が激化する現在、Amazonにおける商品の露出と差別化は、成功を左右する重要な要素となっています。数百万の商品が並ぶAmazonプラットフォームにおいて、従来のテキストや静止画だけでは商品の真の魅力を伝えることが困難になっており、より効果的なマーケティング手法が求められています。
そこで注目を集めているのが、Amazon動画広告です。この革新的な広告形式は、視覚と聴覚に同時に訴えかけることで、商品の特徴や使用方法を具体的かつ印象的に伝えることを可能にします。動画広告は単なる商品紹介にとどまらず、ブランドストーリーの構築、顧客との感情的なつながりの創出、そして最終的な購買行動の促進において、従来の広告手法を大きく上回る効果を発揮しています。
本記事では、Amazon動画広告の全体像から具体的な活用方法まで、メーカーのEC事業担当者が知っておくべき重要な情報を包括的に解説します。スポンサーブランド動画広告、スポンサーディスプレイ動画広告、Amazon DSP動画広告という3つの主要タイプの特徴と活用場面、それぞれのメリットと費用体系、効果的な動画制作のポイント、そして実際の配信設定方法まで、実践的な知識を体系的に紹介します。
動画広告の導入を検討している企業から、既に運用を開始しているがより効果を高めたい企業まで、幅広い読者のニーズに応える内容となっています。Amazon動画広告を戦略的に活用することで、商品の認知度向上、ブランド価値の構築、そして売上の持続的な成長を実現するための具体的な方法論を習得することができます。
目次
1. Amazon動画広告の概要
2. Amazon動画広告の種類
3. スポンサーブランド動画広告の活用メリット
4. スポンサーディスプレイ動画広告の活用メリット
5. Amazon DSP動画広告の活用メリット
6. Amazon動画広告の費用体系
7. 効果的な動画広告制作のポイント
8. Amazon動画広告の配信設定方法
9. まとめ
1. Amazon動画広告の概要
Amazon動画広告は、Amazonのショッピングサイトやアプリ上で配信される動画形式の広告であり、現在のEC市場において欠かせないマーケティングツールとなっています。この広告形式の最大の特徴は、商品やブランドの魅力を視覚的かつ聴覚的に訴求できる点にあります。
従来のテキスト広告や静止画広告では表現しきれない商品の特徴や使用方法を、動画を通じて具体的に示すことができるため、ユーザーの理解と共感を深めることが可能です。特に、商品の質感や動きを伝えたい場合には、動画広告が圧倒的な優位性を持っています。
Amazon動画広告の配信範囲は、Amazon内にとどまらず、関連プラットフォームや外部サイトにも及びます。これにより、Amazon外の潜在顧客層にもリーチでき、ブランド認知度の向上や新規顧客獲得に効果を発揮します。また、Amazonが保有する膨大な閲覧・購買データを活用した高精度なターゲティングも大きな魅力の一つです。
動画広告の費用は主にクリック課金(CPC)型で設定されており、広告が表示されただけでは費用が発生せず、ユーザーがクリックした際にのみ課金される仕組みとなっています。この課金方式により、費用対効果を測定しやすく、予算管理も効率的に行えます。
2. Amazon動画広告の種類
Amazon動画広告は、配信先や目的に応じて主に3つのタイプに分類されます。それぞれに独自の特徴と活用場面があるため、マーケティング戦略に応じて適切な選択を行うことが重要です。
Amazonスポンサーブランド動画広告
Amazonスポンサーブランド動画広告(SBV広告)は、Amazon内の検索結果画面や商品ページに表示される動画形式の広告です。この広告は、6秒から45秒の動画クリエイティブと1点の商品詳細情報が表示される構成となっており、検索結果ページの上部や商品リスト内に大きな枠で表示されるため、ユーザーの目を引きやすい特徴があります。
SBV広告の利用には、Amazonブランド登録が完了していることが必要条件となります。キーワード、カテゴリー、商品を通じてターゲットを定めることができ、クリック課金制で運用されます。広告をクリックしたユーザーは、広告主が設定したリンク先であるAmazonストアや商品詳細ページに誘導される仕組みです。
この広告タイプは、ブランド認知度を高めたい場合に特に効果的とされており、動画の内容に加えて、キーワードの選定にも注力することで、より高い効果を期待できます。
Amazonスポンサーディスプレイ動画広告
Amazonスポンサーディスプレイ動画広告は、Amazon内での検索結果画面や商品ページだけでなく、外部のWebサイトやアプリにも広告を表示できる点で、スポンサーブランド動画広告と差別化されています。配信範囲が広がることで、より多くの潜在顧客にリーチすることが可能です。
この広告の大きな特徴として、リターゲティング機能があります。過去に広告商品を閲覧したユーザーに対して再度広告を表示することで、購買意欲を高める効果が期待できます。また、Amazon内のみならず、TwitchやIMDbなどのAmazon関連サイト、さらにはサードパーティのWebサイトやアプリにまで広告が掲載されるため、新規見込み顧客の獲得にも有効です。
費用体系はクリック課金または1,000件あたりのビューアブルインプレッション単価で設定でき、広告目的に応じて選択できる柔軟性があります。
Amazon DSP動画広告
Amazon DSP動画広告は、Amazonが提供する動画広告プラットフォームの中で最も柔軟性と配信力を持つオプションです。この広告形式は、Amazonの膨大な閲覧・購買データを活用し、精密なターゲティングでユーザーにリーチできる特徴があります。
Amazon DSP動画広告の最大の特徴は、Amazon内外の多様な配信面に広告を表示できる点です。Amazon自社のプラットフォームだけでなく、TwitchやFire TVチャンネルなどのAmazon関連サービス、さらには提携する外部Webサイトにも広告を配信できます。
重要な点として、Amazon DSP動画広告は出品者側で直接運用することができません。利用するためには、Amazonに直接依頼するか、DSP広告用のアカウントを保有している広告代理店などに運用を委託する必要があります。また、Amazonに登録しているセラーでなくても利用できるため、Amazon外の事業者にとっても魅力的な広告選択肢となっています。
3. スポンサーブランド動画広告の活用メリット
スポンサーブランド動画広告は、Amazon内での競争が激化する中で、商品の差別化を図る重要なツールとして位置付けられています。このセクションでは、SBV広告がもたらす具体的なメリットについて詳しく解説します。
商品をより魅力的に訴求できる
スポンサーブランド動画広告では、視覚と聴覚の両方を活用して商品をより魅力的に訴求することが可能です。動画を通じて製品の特徴や使い方を動的に示すことで、ユーザーに製品の利点をより直感的に伝えることができます。
映像と音楽やナレーションを組み合わせることで、商品の価値やブランド世界観を効果的に伝達でき、強いインパクトを与えることができます。例えば、ヘッドホンの広告であれば、実際に人が使用しているシーンを動画で見せることで、サイズ感や装着感をより具体的にイメージしやすくなります。キッチン用品であれば、料理をしているシーンを動画で紹介することで、商品の使い勝手や便利さを視覚的に伝えることが可能です。
静止画やテキストでは表現しきれない商品の魅力をユーザーに訴求できる点は、スポンサーブランド動画広告の大きなメリットといえます。
テキストでは伝えられない情報も訴求できる
動画を利用することで、テキスト広告では伝えきれない情報を、映像を通じて詳細に伝えることができます。商品の使用方法や実際の使用シーン、製品の動きや質感などは、視覚的な情報が豊富な動画広告ならではの表現が可能です。
感情に訴えかけるストーリーや背景にある物語を映像化することで、テキストでは伝えきれなかった強い思いを表現できる点も重要です。15秒の動画は約450枚の静止画に相当するといわれており、その情報量の豊富さが商品理解の促進につながります。
スポンサーブランド動画広告を利用することで、製品の持つ価値を余すところなく伝え、ユーザーの理解と共感を深めることができます。これにより、購買意欲の向上と最終的な売上増加に寄与する効果が期待できます。
費用対効果が高い傾向にある
スポンサーブランド動画広告は、費用対効果が高い傾向にあります。動画はユーザーの関心を引きやすいため、クリック率やエンゲージメント率が高くなりやすく、Amazonの商品ページやストアをリンク先に設定できるため、ユーザーが購買アクションを起こしやすい環境を提供していることが理由として考えられます。
Amazon公式のデータによると、広告主がスポンサーブランド広告に続いてスポンサーブランド動画広告を開始した結果、その後3か月間にわたり平均して1か月あたりのインプレッション数が28%、クリック数が33%、CTRが2%、広告費用対効果(ROAS)が4%増加したという実績があります。
また、動画広告はディスプレイ広告に比べて、CVR(コンバージョン率)が高く、ROAS(広告の費用対効果)も高い傾向にあることが確認されています。これは、表示面が増えていることや、ディスプレイ広告に比べて競合が少ないことも一因とされています。
4. スポンサーディスプレイ動画広告の活用メリット
スポンサーディスプレイ動画広告は、Amazon内外への広範囲な配信が可能な広告形式として、多くの企業に注目されています。このセクションでは、その具体的なメリットについて説明します。
商品の使用イメージを伝えられる
スポンサーディスプレイ動画広告は、商品の使用イメージや具体的な利点を、映像を通じて効果的に伝えることが可能です。広告の閲覧者は商品がどのように使われるか、どのような状況で役立つかを直感的に理解することができます。
実際の使用イメージを動画で見せることで、自分が使う場面を具体的に想像しやすくなり、購入意欲を高めることが可能です。特に、商品の機能性や効果が重要な商品カテゴリーにおいては、この視覚的な訴求力が大きな差別化要因となります。
動画による商品紹介は、ユーザーの不安や疑問を解消する効果も期待できます。使用方法が複雑な商品や、効果が分かりにくい商品でも、動画を通じて実際の使用状況を示すことで、ユーザーの理解を深めることができます。
Amazon外への訴求・コンバージョンが見込める
スポンサーディスプレイ動画広告は、Amazonプラットフォーム外にも広告を配信できるため、Amazonユーザー以外の潜在顧客にもリーチ可能です。ブランド認知度をAmazon外でも高められ、Amazon外でのコンバージョン(CV)を見込むこともできます。
関連するブログやニュースサイト、SNSなどで動画広告が表示されることで、ユーザーの購買意欲を刺激し、最終的にAmazonでの購入に結びつけることが可能です。この外部配信機能により、これまでAmazonを利用していなかった新規顧客層にもアプローチでき、市場シェアの拡大につながる効果が期待できます。
スポンサーディスプレイ動画広告を利用することで、広告キャンペーン全体の効果を高め、より多くのコンバージョンを達成することができます。特に、Amazon Prime Videoを通じた広告配信も可能になっており、高い購買力を持つ視聴者層にリーチできることは大きなメリットです。
5. Amazon DSP動画広告の活用メリット
Amazon DSP動画広告は、最も高度な機能と柔軟性を提供する広告形式として、大規模なマーケティング戦略において重要な役割を果たします。
目的に合わせて柔軟な設計が可能
Amazon DSP動画広告は、広告を出稿する目的に合わせて、ターゲティングや予算、遷移先などさまざまな面で柔軟な設定が可能です。ターゲティングでは、年齢、性別、興味関心、購買履歴、閲覧履歴、ライフスタイルなど、多様なオーディエンス条件を利用できます。
広告の遷移先も商品ページだけでなく、自社サイトなど任意のページを指定することができるため、広告キャンペーンの目的に応じて最適な導線を設計できます。このような柔軟性により、精度の高いマーケティングで、無駄な広告費を削減したい企業にとって理想的な広告選択肢となっています。
また、予算配分や配信タイミングなども細かく調整できるため、マーケティング戦略全体との整合性を保ちながら効果的な広告運用が可能です。
外部のさまざまなサイトに広告配信できる
Amazon DSP動画広告は、外部のさまざまなサイトに広告を配信可能です。配信先のサイトのジャンルが多様なため、年齢や性別、趣味嗜好が異なる多様なユーザーにリーチできます。
Amazon自社のプラットフォームに加え、TwitchやFire TVチャンネルなどのAmazon関連サービス、さらには提携する外部Webサイトへの配信により、広告リーチを大幅に拡大できます。Amazonのセラーではなくとも利用できるため、EC事業者以外の企業にとっても、広告の配信媒体として有力な選択肢となります。
このような広範囲な配信ネットワークにより、ブランド認知度の向上から具体的な購買行動の促進まで、マーケティングファネルの各段階において効果的なアプローチが可能となります。
6. Amazon動画広告の費用体系
Amazon動画広告を効果的に活用するためには、費用体系を正確に理解することが重要です。各広告タイプの費用構造を把握し、予算計画を適切に立てることで、ROIの最大化を図ることができます。
スポンサーブランド動画広告の費用
スポンサーブランド動画広告は、クリック課金(CPC)型の広告です。そのため、広告が表示されただけでは予算が消化されず、ユーザーがクリックした際にのみ費用が発生します。この課金方式により、実際に興味を示したユーザーに対してのみ費用を支払うことになるため、効率的な予算運用が可能です。
スポンサーブランド動画広告の1クリックの相場は、20円から200円の範囲となっており、1日あたりの平均予算は1,000円からとされています。ただし、これらの数値は業界や競合状況、商品カテゴリーによって変動する可能性があるため、継続的な監視と調整が必要です。
競合が少ない動画広告の特性を活かし、始めは入札額を低めに設定して、配信量を見ながら調整することが推奨されています。Amazonの推奨入札額より20から30%低めに設定してスタートし、パフォーマンスを確認しながら最適化を図る戦略が効果的です。
スポンサーディスプレイ動画広告の費用
スポンサーディスプレイ動画広告は、クリック課金または1,000件あたりのビューアブルインプレッション単価をもとに費用が発生します。クリック単価はスポンサーブランド動画広告と同様の相場であり、クリックが起こらない限りは費用が発生することはありません。
一方、ビューアブルインプレッション単価の場合には、広告の表示回数1,000回ごとに費用が発生します。この課金方式は、入札額の設定において「リーチ最適化」を選択した場合にのみ採用されます。ブランド認知度の向上を主目的とする場合には、インプレッション課金を選択することで、より多くのユーザーに広告を見せることが可能です。
配信先が拡大することで、キーワードターゲティングと商品ターゲティングでは、一般的にキーワードターゲティングの方が高い費用となる傾向があります。そのため、商品ターゲティングの入札額を控えめにして、配信量やROASを見て調整することが推奨されています。
7. 効果的な動画広告制作のポイント
Amazon動画広告の効果を最大化するためには、技術的な要件を満たすだけでなく、ユーザーの行動特性を理解した戦略的な制作が必要です。
動画は20秒以内に収める
Amazon動画広告を効果的に活用するには、動画の長さを適切に設定することが重要です。Amazon広告の公式ガイドラインでは、スポンサーブランド動画広告の場合、6秒から45秒の動画が投稿可能ですが、30秒以下を強く推奨しています。しかし、より効果的な結果を得るためには、20秒以内に収めることがおすすめです。
Amazonでの買い物体験において、ユーザーの主な目的は商品を探すことであり、動画を視聴することではありません。長い動画は視聴者を飽きさせ、商品への興味を失わせる可能性が高くなります。短い動画は視聴完了率が高くなる傾向にあり、20秒以内の動画であれば、ユーザーが最後まで視聴する可能性が高くなり、商品やブランドのメッセージを効果的に伝えられます。
動画広告の視聴維持率は、時間が経つほど顕著に減少するため、簡潔で分かりやすい内容に集約することが成功の鍵となります。
最初の数秒でユーザーを惹き付ける工夫をする
Amazon動画広告の成功の鍵は、最初の数秒でユーザーの興味を引くことにあります。多くのユーザーは短時間で大量の情報を消費する傾向にあるため、動画の冒頭で強烈なインパクトを与えることが重要です。
具体的には、最初の2から3秒で商品を表示し、続く5秒間で主要な機能や特徴を紹介することが効果的です。ユーザーの注目を集めるためには、商品画像から始めるのが有効であり、表現にスピード感を持たせたり、インパクトのある表現を取り入れることで、最後まで視聴してもらえる可能性が高まります。
重要なのは、自社のブランドや商品の強みを強調し、それがどのようにユーザーのニーズに応え、生活を向上させるかを明確に示すことです。ブランド名とロゴを含めるのは、動画の後半にすることで、まず商品に興味を持ってもらうことを優先します。
音声なしでも理解できる内容にする
Amazon動画広告を制作する際、音声なしでも内容が理解できるようにすることが非常に重要です。スポンサーブランド動画広告は、音声なしで自動再生され、ユーザーがクリックすると音声が流れる仕組みとなっています。また、多くのユーザーは電車内や職場など、音声を再生できない環境でAmazonを閲覧しているため、音声に頼らずに商品の魅力を伝える工夫が必要です。
効果的な方法として、テロップや字幕の活用が挙げられます。商品の特徴や利点を簡潔な文字で表示することで、音声がなくても視覚的に情報を伝えることができます。また、商品の使用シーンや効果を視覚的に示す映像を使用することも効果的です。
ただし、音声を完全に排除する必要はありません。ユーザーが音声をオンにした際に、より豊かな情報を提供できるよう、音声と視覚情報を補完的に使用することが理想的です。
ワクワク感と好奇心を醸成する
視聴者が詳しい情報を求めて商品やストアページを閲覧するきっかけとなるような、ワクワク感と好奇心を醸し出すクリエイティブを作成することが重要です。宣伝したい商品に関するすべてを詳細に紹介するのではなく、あくまでフックとなるような動画が効果的です。
商品の魅力的な側面や、ユーザーの生活にどのような変化をもたらすかを暗示的に示すことで、視聴者の興味を引き、より詳しい情報を求める行動につなげることができます。このアプローチにより、広告から商品ページへの遷移率向上が期待できます。
8. Amazon動画広告の配信設定方法
Amazon動画広告を効果的に配信するためには、適切な設定手順を理解することが重要です。ここでは、主要な動画広告タイプの設定方法について詳しく解説します。
スポンサーブランド動画広告の配信設定
スポンサーブランド動画広告は、Amazon広告コンソールからキャンペーンを作成し、「スポンサーブランド広告」を選択することから始まります。基本設定では、キャンペーン名、ポートフォリオ、開始日・終了日、1日の予算を設定します。
広告グループの作成では、広告フォーマットで「動画」を選択することが重要なポイントです。リンク先設定では、Amazonストア(サブページを含む)または商品詳細ページを選択できます。商品詳細ページは特定の商品に関する情報を提供するページであり、Amazonストア内ページはブランドや商品をより自由にデザインして顧客に紹介するページです。
広告のクリエイティブ指定では、広告を配信したい商品を選択しますが、動画広告に写っていない商品を選択すると審査に落ちるため注意が必要です。動画クリエイティブの追加後、ターゲティング設定を行います。
ターゲティング設定の選択肢
スポンサーブランド動画広告では、キーワードターゲティングと商品ターゲティングの2種類のターゲティングが利用可能です。自身で設定するマニュアルターゲティングのみで、自動で配信できるオートターゲティングは利用できません。
キーワードターゲティングでは、「完全一致」「フレーズ一致」「部分一致」のマッチタイプが選択可能です。完全一致は検索用語がキーワードや語順と完全に一致する場合に表示され、フレーズ一致はフレーズまたは語句の並びが含まれている場合に表示されます。部分一致は最も広範囲に広告が表示され、キーワードの意味と広告対象商品のコンテキストによって決まる単数形、複数形、変化形、同義語、および関連する用語が含まれる場合があります。
商品ターゲティングでは、特定の商品、カテゴリー、ブランド、またはその他の商品機能を選択して、広告をターゲティングします。
入札戦略の設定
入札方法では、推奨入札額、カスタム入札額、入札額の初期値が利用できます。スポンサーブランド動画広告は競合が少ないため、始めは入札額を低めに入れることが推奨されています。推奨入札額より20から30%低めに設定して、配信量を見て調整することがベターな戦略です。
除外ターゲティングの設定も重要な要素です。除外キーワードターゲティングでは、「完全一致」と「フレーズ一致」での除外が可能です。除外商品ターゲティングでは、ブランドを指定してブランドに含まれる商品を一括で除外したり、商品(ASIN)を1つずつ指定して除外することができます。
スポンサーディスプレイ動画広告の配信設定
スポンサーディスプレイ動画広告は、「スポンサーディスプレイ広告」を選択して設定を開始します。設定手順では、まず入札方法を決定し、広告フォーマットで「動画」を選択します。その後、広告商品の選択、クリエイティブの作成・動画の追加を行い、最後にターゲティングの選択を行います。
ターゲティングでは、「コンテキストターゲティング」または「オーディエンスの選択」から選択できます。いずれの広告も、設定完了後にAmazon側での審査があり、審査期間は24時間から最長で3営業日程度かかります。広告の配信状況は、キャンペーンマネージャーの「クリエイティブ」タブから確認が可能です。
9. まとめ
Amazon動画広告は、現代のEC市場において商品の差別化と効果的なマーケティングを実現する重要なツールとして確立されています。視覚と聴覚を活用して商品やブランドメッセージを効果的に伝えることができるこの広告形式は、従来のテキストや静止画広告では実現できない訴求力を持っています。
スポンサーブランド動画広告、スポンサーディスプレイ動画広告、Amazon DSP動画広告という3つの主要な形式は、それぞれ異なる目的と配信範囲を持ち、マーケティング戦略に応じて適切に選択することで最大の効果を発揮します。費用対効果の高さも動画広告の大きな魅力であり、適切な制作とターゲティングにより、ROIの大幅な改善が期待できます。
効果的な動画広告制作のためには、20秒以内の簡潔な動画、最初の数秒でのインパクト、音声なしでも理解できる内容、そしてユーザーの好奇心を刺激する要素が重要です。これらの要素を組み合わせることで、ユーザーの注意を引き、商品への興味と購買意欲を効果的に喚起することができます。
配信設定においては、適切なターゲティング戦略と入札戦略の選択が成功の鍵となります。競合が比較的少ない動画広告の特性を活かし、段階的な最適化を行うことで、費用を抑えながら効果を最大化することが可能です。
Amazon動画広告の活用は、単なる商品露出の増加にとどまらず、ブランド価値の向上、顧客との関係構築、そして長期的な売上成長につながる戦略的投資といえます。EC市場の競争がますます激化する中で、動画広告を効果的に活用することは、持続可能な成長を実現するための必須要素となっています。
監修者 : 田中 謙伍
株式会社GROOVE 代表取締役
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社。出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、マーケティングマネージャーとしてAmazon CPC広告スポンサープロダクトの立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。
【登録者数 5万人のYouTubeチャンネル】
たなけんのEC大学:https://www.youtube.com/@ec8531
執筆者 : 松岡 孝明
株式会社GROOVE マーケティング事業部
大学卒業後、大手百貨店に就職。店頭での販売やマーケティング経験を積んだ後、ECコンサルティング事業を行なう企業へ転職。現在は株式会社GROOVEにて、マーケティングを担当。EC運営に関するお役立ち情報の発信や、セミナーの企画などを行なっています。