TikTokにおけるインフルエンサーマーケティング徹底解説

近年、短動画プラットフォームとして急成長を遂げているTikTokは、企業のマーケティング戦略において重要な位置を占めるようになりました。特に若年層を中心とした巨大なユーザーベースと圧倒的な拡散力を持つTikTokでは、インフルエンサーマーケティングが従来の手法とは異なる独特の発展を遂げています。
しかし、TikTokのインフルエンサーマーケティングには、他のSNSにはない特有の特徴やメリット、そして注意すべき課題が存在します。成功のためには、プラットフォームの性質を深く理解し、適切な戦略を立てることが不可欠です。本記事では、TikTokインフルエンサーマーケティングの基本概念から具体的な施策手法、費用相場、依頼方法まで、企業が知っておくべき重要なポイントを網羅的に解説します。
1. TikTokプラットフォームの特徴と現状
TikTokは、最大10分程度のショートムービーを制作・投稿できる動画特化型SNSプラットフォームです。世界150ヵ国以上で展開され、月間アクティブユーザー数は10億人を超える巨大なプラットフォームに成長しています。
TikTokの技術的特徴
TikTokの最大の特徴は、誰でも簡単に高品質な動画を制作できる点にあります。アプリには音楽やフィルター、特殊加工などのツールがテンプレートとして豊富に用意されており、専門的な動画編集スキルを持たない一般ユーザーでも、デザイン性の高い動画制作が可能です。このアクセシビリティの高さが、多様なクリエイターの参入を促進し、プラットフォーム全体の活性化につながっています。
ユーザー層の特徴
TikTokのユーザー層は若年層が中心で、平均年齢は約34歳と報告されています。特に中高生から20代のユーザーが多く、全体の約7割が30歳未満の若年層で占められています。これらのユーザーは一般的にトレンドや流行に敏感で、イノベーター気質を持つ傾向があります。
レコメンド機能の威力
TikTokの大きな特徴の一つが、AIによる高精度なレコメンド機能です。この機能により、ユーザーの過去の視聴履歴や行動パターンを分析し、興味のありそうなコンテンツを自動的におすすめ表示します。これにより、フォロワー以外のユーザーにも効率的にリーチできる仕組みが構築されています。
2. TikTokインフルエンサーマーケティングの基本概念
インフルエンサーマーケティングとは、影響力のあるクリエイター(インフルエンサー)と企業が協力し、商品やサービスの認知拡大やブランディングを行うマーケティング手法です。TikTokにおけるインフルエンサーマーケティングは、プラットフォームの特性を活かした独自の発展を遂げています。
ハッシュタグチャレンジの重要性
TikTokインフルエンサーマーケティングにおいて中核となるのが「ハッシュタグチャレンジ」です。これは、企業が特定のハッシュタグを設定し、インフルエンサーがそのハッシュタグを使用した動画を投稿することで、一般ユーザーの参加を促進する仕組みです。成功すれば、インフルエンサーの投稿をきっかけに多数の一般ユーザーが類似の動画を投稿し、自然な形での拡散が期待できます。
コンテンツの特性
TikTokで成功するコンテンツは、独創性とエンターテイメント性を重視する傾向があります。他のSNSと比較して、直接的な商品宣伝よりも、ユーモアやクリエイティビティを活かした自然な商品紹介が好まれます。この特性により、従来の広告とは異なる新しいアプローチが求められます。
3. TikTokインフルエンサーマーケティングの特徴と強み
圧倒的な拡散力
TikTokインフルエンサーマーケティングの最大の強みは、その圧倒的な拡散力にあります。AIレコメンド機能により、フォロワー以外のユーザーにも効率的にリーチできるため、他のSNSと比較して短期間での大規模な認知拡大が可能です。実際に、無名の一般ユーザーが一夜にして有名になるケースも珍しくありません。
高いエンゲージメント率
TikTokはユーザーの反応率が非常に高いプラットフォームです。調査によると、TikTokユーザーの約2割がコンテンツを視聴後に検索などの具体的な行動を起こしており、5割のユーザーがハッシュタグをつけて投稿した経験があります。この高いエンゲージメント率は、マーケティング効果の向上に直結します。
バックグラウンド再生の制限効果
TikTokはアプリの仕様上、バックグラウンド再生ができません。この特性により、ユーザーは動画に集中して視聴し、視聴後にいいねやシェア、コメントなどのアクションを起こしやすくなります。結果として、他のSNSと比較してユーザーとの距離感が近く、より深いコミュニケーションが期待できます。
グローバルリーチの可能性
TikTokは世界150ヵ国以上でサービスを展開しているため、海外ユーザーへのアプローチも可能です。適切なハッシュタグや世界的に認知度の高い楽曲を活用することで、国境を越えたマーケティング展開ができます。
4. インフルエンサーマーケティングがもたらすメリット
自然な受け入れやすさ
TikTokのインフルエンサーマーケティングは、一般ユーザーに自然な形で受け入れられやすいという大きなメリットがあります。インフルエンサーが日常的な投稿の延長として商品やサービスを紹介することで、従来の広告に対する警戒心を和らげ、親近感のあるコミュニケーションが実現できます。
ターゲット層への効率的なリーチ
AIレコメンド機能により、企業がターゲットとするユーザー層に効率的にコンテンツを届けることができます。特に飲食業、ファッション、コスメなどの業界では、10~30代の若年層をターゲットにしたコンテンツとの相性が良く、高い効果が期待できます。
視覚的訴求力の活用
動画コンテンツの特性を活かし、視覚的に訴える情報をダイレクトに効率よく伝えることができます。商品の使用方法や効果を実際の映像で示すことで、テキストや静止画では伝えきれない魅力を伝達できます。
5. 注意すべきリスクと課題
ターゲット層の限定性
TikTokの主要ユーザー層は30歳未満の若年層であるため、40代以上の中高年層をターゲットとする企業には適さない場合があります。また、トレンドに敏感なイノベーター気質のユーザーが多いため、商品やサービスのジャンルによっては効果が限定的になる可能性があります。
売上への直結性の課題
TikTokのインフルエンサーマーケティングは、必ずしも売上に直結するわけではありません。調査によると、TikTokをきっかけに商品に興味を持ったユーザーは42.5%いるものの、そのうち実際に購入に至ったのは約40%で、全体に対する割合では19.5%に留まっています。そのため、直接的な売上向上よりも、認知度向上やブランディングを主目的として活用することが重要です。
トレンドの変化速度
TikTokのトレンドは非常に速いペースで変化するため、継続的な情報収集と迅速な対応が必要です。昨日まで人気だったハッシュタグや手法が、翌日には陳腐化している可能性もあり、常に最新の動向を把握し続ける必要があります。
6. 効果的な施策の種類と手法
商品ギフティング・サービス体験
最も一般的な手法の一つが、商品ギフティングやサービス体験です。企業が商品やサービスをインフルエンサーに無料で提供し、実際の使用感や体験をSNS上で投稿してもらいます。この手法は美容・コスメ、ファッション、グルメ、アプリ、ゲーム、家電などの幅広いジャンルで効果的です。
現地訪問型施策
企業が運営するイベントや施設、店舗などにインフルエンサーを招待し、その体験を投稿してもらう手法です。実体験に基づいたリアルなレビューを発信できるため、ユーザーの興味関心を強く引くことができます。旅行・観光事業、レジャー施設、商業施設、不動産などの業界で特に効果的です。
ライブコマース
TikTokのライブ配信機能を活用し、インフルエンサーが商品やサービスをリアルタイムで紹介する手法です。視聴者からの質問にその場で回答できるため、購買の意思決定を促進する効果があります。美容・コスメ、グルメ、ファッションなど、視覚的効果が分かりやすい商品に適しています。
監修・コンサルティング
商品開発やイベント企画時に、インフルエンサーに監修やコンサルティングとして参加してもらう手法です。トレンドに敏感なインフルエンサーの視点を活用することで、斬新なアイデアの創出やブランド価値の向上が期待できます。
7. 費用相場と料金体系
フォロワー数ベースの料金設定
TikTokインフルエンサーマーケティングの料金は、一般的にフォロワー数×単価で算出されます。フォロワー100万人以上のメガインフルエンサーの場合は4~6円、フォロワー10万人以上のミドルインフルエンサーは3~5円、フォロワー1万人以上のマイクロインフルエンサーは2~3円が相場となっています。
例えば、フォロワー数10,000人のマイクロインフルエンサーに依頼する場合、単価3円で計算すると30,000円の費用が必要です。一方、フォロワー数1,000,000人のメガインフルエンサーの場合、単価5円で計算すると5,000,000円となり、大きな予算が必要になります。
その他の料金形態
フォロワー数ベース以外にも、動画再生回数×単価、成果報酬型、費用全額負担型などの料金形態があります。インフルエンサーの希望や施策の内容に応じて、最適な料金形態を選択することが重要です。
8. インフルエンサーへの依頼方法
直接DM による依頼
TikTokのDM機能を使用してインフルエンサーに直接連絡する方法です。仲介手数料が不要で最もシンプルな方法ですが、初めてインフルエンサーマーケティングを実施する企業には難易度が高い場合があります。
所属事務所経由での依頼
インフルエンサーの所属事務所を通じて依頼する方法です。経験豊富な事務所からの提案を受けられ、契約や支払いなどの事務手続きも任せることができます。また、企業イメージに適したインフルエンサーの紹介も期待できます。
マッチングプラットフォームの活用
インフルエンサーマーケティング専門のマッチングプラットフォームを利用する方法です。インフルエンサーの選定からマネジメント、効果測定まで一連のプロセスを効率的に進めることができます。初めて施策を実施する企業や、リソースが限られている企業に特に適しています。
まとめ
TikTokにおけるインフルエンサーマーケティングは、従来のマーケティング手法とは大きく異なる特徴と可能性を持っています。圧倒的な拡散力と高いエンゲージメント率を活かすことで、短期間での大規模な認知拡大が可能です。
ただし、成功のためには以下の点を十分に理解し、適切な戦略を立てることが重要です。ターゲット層が若年層に限定されること、売上への直結性に課題があること、トレンドの変化が激しいことなどの制約を理解した上で、認知拡大やブランディングを主目的とした長期的視点での活用が求められます。
また、費用対効果を最大化するためには、自社の商品・サービスとTikTokの特性の適合性を十分に検討し、適切なインフルエンサーの選定と施策内容の企画が不可欠です。マーケティング目的を明確にし、「安い」「高い」ではなく目的達成の可能性を基準としてインフルエンサーや手法を選択することで、TikTokインフルエンサーマーケティングの真価を発揮できるでしょう。
企業がTikTokインフルエンサーマーケティングに取り組む際は、プラットフォームの特性を深く理解し、長期的なブランド価値向上を目指した戦略的なアプローチを心がけることが成功への鍵となります。
監修者 : 田中 謙伍
株式会社GROOVE 代表取締役
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社。出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、マーケティングマネージャーとしてAmazon CPC広告スポンサープロダクトの立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。
【登録者数 5万人のYouTubeチャンネル】
たなけんのEC大学:https://www.youtube.com/@ec8531
執筆者 : 松岡 孝明
株式会社GROOVE マーケティング事業部
大学卒業後、大手百貨店に就職。店頭での販売やマーケティング経験を積んだ後、ECコンサルティング事業を行なう企業へ転職。現在は株式会社GROOVEにて、マーケティングを担当。EC運営に関するお役立ち情報の発信や、セミナーの企画などを行なっています。