国内EC市場について
まずは国内EC市場の現状を確認してみましょう。日本EC市場の成長率やプラットフォーム別の流通総額を紹介します。
日本EC市場とAmazonの成長率
上の図は、2014年から2020年における日本EC市場の成長をグラフにしたものです。
2020年時点で、日本の小売市場全体の規模は約150兆円です。そのうちEC市場は約12兆円となっており、EC化率は約8%です。アメリカのEC化率は15%、中国が40%といわれているため、海外と比べると日本のEC化率はまだまだ低いといえるでしょう。しかし市場の伸びは続いており、2019年から2020年にかけて日本のEC市場全体の成長率は21%となっています。
Amazonの成長率は、同じ2019年から2020年にかけて28.7%でした。日本のEC市場全体よりもAmazon単体のほうが成長率が高いことがわかります。
プラットフォーム別の流通総額
次に、国内のプラットフォーム別流通総額を見てみましょう。日本のEC市場規模約12兆円のうち、Amazonは約4兆円、楽天市場は約3兆円、その他が約5兆円だと考えられます。
Amazonの成長率は日本のEC市場全体の成長率を上回っているうえ、プラットフォーム別のシェアも1位です。つまり、EC市場におけるAmazonのシェアは今後もさらに大きくなると予想されます。
Amazonのシェアが大きくなることについて、悲観する必要はありません。ECやD2Cブランドを手がけるうえでは、どのプラットフォームがどう成長しているのか、自分たちのブランドに合うプラットフォームはどこなのかを見極め、選択していくことが大切です。
購買時の情報収集方法
続いて、現代の消費者が購買時の情報収集をどのように行なっているのか確認してみましょう。
上記のグラフは、「買い物をするとき、商品を何で調べるか」という質問に対する回答をまとめたものです。結果は、Amazonが29%、楽天市場が24%、Googleが15%、Yahoo!が10%と続いています。
従来は商品を調べる際に「ググる」のが一般的でしたが、Amazonや楽天といったECモールを情報収集に使う人が半数以上を占めている点に注目です。
「SNS」と答えた人は6%でしたが、Z世代と呼ばれる10代〜20代前半の若者はInstagramなどで商品を探すことが増えています。今後もSNSで検索する人は増えていくと想定されるため、EC/D2C市場においても注目しておくべきツールだといえるでしょう。
上記のグラフは、「買い物をするときに、商品の口コミや評価を何で調べるか」という質問に対する回答をまとめたものです。こちらもAmazonが30%、楽天市場が25%と、1つ目の調査と大きく変わりません。初めて商品を探す場合だけでなく、より深く調べるため口コミをチェックする場合にもAmazonや楽天が大きな役割を果たしていることがわかります。
Amazonについて
これまで多くのブランドがEC市場に参入してきており、EC市場の競争環境はますます激化しています。ここでは、Amazonを中心としたEC市場のブランド構図の変化やWEB広告市場の現状について紹介します。
プレイヤー・ブランド構図の変化
まず、Amazonジャパンの歴史と市場の変遷を確認してみましょう。
Amazonジャパンは2000年の設立後、2007年までは主に書籍を販売するためのプラットフォームであり、その他に売られているのはPanasonicやadidasなど大手ブランドの「型番商品」と呼ばれるものがほとんどでした。
その後、2007年に出品サービスを始めたことから、誰でもAmazonで商品を販売できるようになります。その結果、Amazonの品揃えが変化してきました。例えば、楽天市場で販売が好調だったタンスのゲンは、早期にAmazonに参入して販売を拡大しています。また、モバイルバッテリーなどを手がけるANKERは2011年の設立後、1~2年でAmazon売上ランキングの上位に入っています。
そして、Amazonを主戦場にした「Amazon D2Cブランド」が出てきたのが2014年頃です。2018年頃からはBASE FOODやバルクオムなど「自社サイトもやっていれば、Amazonでも1億円以上の売上を上げている」といったブランドが出てきます。同時に中国などの海外ブランドが増え、D2Cブランドと同程度のシェアを占めるレベルにまで成長してきました。
現在では、Amazonの販売に占めるナショナルブランドのシェアは40~45%程度となっています。それ以外の過半数は、マーケットプレイスから生み出されているD2Cブランド・海外ブランドが占めているのです。
WEB広告市場規模
実は、Amazonは広告事業でも大きな成長を続けています。2021年の決算にてAmazonの広告事業収益が公表され、YouTube広告を上回っていることがわかりました。
2021年の広告収益は、1位がGoogleの約20兆円、2位がFacebookの約10兆円、そして3位のAmazonが約3兆円となっています。YouTubeは約2.9兆円の収益であり、Amazonに抜かれて4位になりました。
AmazonはECモールとしてのコンシューマービジネスだけでなく、広告事業者としても大きな成長を遂げています。
今後の予測
Amazonはすでに国内EC市場のシェア1位であるうえ、その成長率は市場全体を上回っています。つまり、Amazonの国内シェアは今後も継続的に拡大していくでしょう。
さらに、Amazon広告はEC以外の領域にも拡大されていくと考えられます。プライムビデオのほか、アメリカではAmazonホテルやAmazonマンションといった事業も展開されています。AmazonはECモールとしての存在にとどまらず、今後ますます生活に欠かせないインフラとなっていくでしょう。
まとめ
今回は、国内EC市場の現状や販売チャネルとしてのAmazonの成長・変化について解説しました。ECモール・広告事業者としてのAmazonは、今後もますます事業領域を広げながら成長を続けていくと見られます。販売チャネルとしてのAmazonをいかに攻略するかが、EC/D2C事業の成功につながるといえるでしょう。