楽天RMP広告完全ガイド : EC事業者のための包括的マーケティング戦略

近年、顧客のデータを活用したデジタルマーケティングの重要性がますます高まり、企業は様々な広告プラットフォームを活用して、効率的に新規顧客の獲得や既存顧客のLTV向上を図っています。
そのような中で、国内最大級のECプラットフォームである楽天グループが提供する「Rakuten Marketing Platform(RMP)」にも注目が寄せられています。
RMP広告は、楽天市場への出店の有無に関わらず利用できる広告サービスで、楽天の約1億人の会員データを活用した精密なターゲティング広告を提供します。
本記事では、楽天RMPの基本的な仕組みから導入メリット、具体的な活用事例まで詳しく解説していきます。
目次
1. 楽天RMP広告とは何か
2. 楽天RMP広告と楽天RPP広告の違い
3. 楽天RMP広告の主要サービス
3.1. RMP-Unified Ads
3.2. RMP-Display Ads
3.3. RMP-Direct Message
3.4. RMP-SE(Sales Expansion)
4. 楽天RMP広告導入のメリット
4.1. フルファネルマーケティングの実現
4.2. オンオフ統合マーケティングの実現
4.3. 楽天経済圏におけるマーケティング効率の最大化
- 6. まとめ
1. 楽天RMP広告とは何か
楽天RMP(Rakuten Marketing Platform)広告は、楽天グループが提供する統合型マーケティングプラットフォームです。従来の楽天市場内の広告配信サービスから大きく発展し、広告配信だけでなく、CRM機能やデータ分析機能まで含む包括的なマーケティングソリューションとして位置づけられています。
楽天RMPの最大の特徴は、楽天が保有する約1億人の膨大な顧客データと多様なサービスとの連携にあります。楽天会員IDに紐づいた顧客データや、楽天グループの多様なサービスを通して得られた行動データを活用することで、ユーザーひとりひとりに最適なマーケティング活動を実現します。
このプラットフォームの革新性は、楽天市場への出店の有無に関わらず利用できる点にあります。楽天市場に出店していない企業でも、楽天の持つ豊富な顧客データを活用した精密なターゲティング広告を配信することが可能になりました。これにより、より幅広い企業が楽天経済圏における効果的なマーケティング活動を展開できるようになっています。
楽天RMPは単なる広告配信ツールではなく、企業のマーケティング活動全体を支援する統合プラットフォームとして機能し、デジタルマーケティングの重要性が高まる現代において、企業の成長を支える重要な役割を果たしています。
2. 楽天RMP広告と楽天RPP広告の違い
楽天RMP広告と楽天RPP広告は、しばしば混同されがちですが、実際には対象とする広告主、配信面、サービス内容において大きな違いがあります。これらの違いを正確に理解することは、自社に最適な広告戦略を選択する上で極めて重要です。
楽天RPP広告は、楽天市場に出店している店舗のみが利用できる広告で、楽天市場内の様々な場所に広告を掲載することが主な機能です。一方、楽天RMP広告は楽天市場の出店店舗はもちろん、楽天市場に出店していない企業も利用可能です。
配信面においても大きな違いがあります。楽天RPP広告が楽天市場内に限定されるのに対し、楽天RMP広告は楽天グループの多様なサービスや、提携サイトを含む楽天以外の外部サイトにも広告配信が可能です。これにより、より広範囲なユーザーリーチを実現できます。
サービス内容の観点から見ると、楽天RPP広告は検索連動型広告が中心ですが、楽天RMP広告は運用型ディスプレイ広告、ダイレクトメッセージ、メール配信など、多様なマーケティング手法を統合的に提供しています。
また、データ活用の範囲も異なります。楽天RMP広告では、楽天グループ全体のサービスから得られる顧客データを活用できるため、より精密なターゲティングと効果的なマーケティング施策の実行が可能になります。このような包括的なアプローチにより、認知拡大から購入促進、リピーター育成まで、顧客のライフサイクル全体にわたる一貫したマーケティング戦略を展開できるのが楽天RMP広告の大きな優位性です。
3. 楽天RMP広告の主要サービス
楽天RMP広告は、企業の多様なマーケティングニーズに応えるため、5つの主要サービスを提供しています。これらのサービスは単独でも効果的ですが、組み合わせることでより強力なマーケティング効果を発揮します。
3.1. RMP-Unified Ads
RMP-Unified Adsは、楽天グループサービス内の様々な広告枠に対して、一括で運用型ディスプレイ広告の配信・掲載が可能なサービスです。楽天市場をはじめ、楽天トラベル、楽天ブックスなど、複数のサービスにまたがって広告を展開できます。
このサービスの最大の特徴は、楽天会員のデモグラフィックデータや実行動データを活用したターゲティング機能です。AIを活用した未来購買予測と組み合わせることで、コンバージョンの可能性が高いユーザーを特定し、広告運用の効率化を実現します。
3.2. RMP-Display Ads
RMP-Display Adsは、楽天の膨大なデータに基づく詳細なターゲティングと、多様な配信フォーマットで、認知から購買・ファン化まで消費者の行動全体に効果的にアプローチできる運用型広告です。
高精度なターゲティングが可能で、1億人以上の楽天会員の購買・閲覧履歴などの行動データに基づき、従来の属性やキーワードだけでは絞り込めなかったターゲットへピンポイントに訴求できます。バナー広告、ネイティブ広告、動画広告、SNS広告など様々なフォーマットに対応し、ニーズに最適な広告展開が可能です。
特筆すべき機能として、実店舗購買への貢献度測定があります。レポートツール「Instore Tracking」を活用することで、実店舗購買に対する広告効果を可視化し、従来困難だったフルファネルマーケティングを実現できます。
3.3. RMP-Direct Message
RMP-Direct Messageには、メールとDMの2つの形式があります。メール版では、楽天会員にメールで情報をお届けし、購買や来店促進などの行動喚起を促すことが可能です。属性情報や独自セグメントを活用したターゲットを絞ったダイレクトアプローチや、メールを見たユーザーが楽天ポイントを獲得できるクリックインセンティブ付きのメール配信も可能です。
DM版では、楽天会員に封書やハガキでDMをお届けし、興味・行動を促します。封入タイプのDMにサンプル品を同封して送付するDMサンプリングも実施可能で、より具体的な商品訴求ができます。
3.4. RMP-SE(Sales Expansion)
RMP-SEは、楽天市場に出店をしていないメーカーが中心に利用できる楽天市場内の検索連動型広告です。楽天市場の検索画面やジャンル検索画面に自社の商品を上位で表示し、ユーザーの目に留まりやすい状態を創り出すことができます。
新商品の認知拡大から売上の創出につなげることが可能で、商品の名称がある程度ユーザーから認知されている場合でも有効な手段となります。検索結果表示画面の上位を確保することで、ユーザーがビッグワードで検索する際にもヒットする可能性が高まります。
4. 楽天RMP広告導入のメリット
楽天RMP広告の導入により、企業は従来の広告手法では実現困難だった高度なマーケティング戦略を展開できるようになります。主要なメリットは以下の3つに集約されます。
4.1. フルファネルマーケティングの実現
楽天RMP広告の最大のメリットの一つは、フルファネルマーケティングの実現です。従来型の広告配信では、認知フェーズ、検討フェーズ、購入フェーズなど、ユーザーの購買プロセスに合わせて個別に広告を配信することが一般的でした。
しかし、楽天RMPでは、楽天グループの膨大な顧客データを活用することで、ユーザーひとりひとりの購買プロセスを網羅的に捉え、各フェーズに最適な広告配信を実現できます。ユーザーが楽天市場で特定の商品を閲覧したというデータを元に、そのユーザーに対して興味関心の高い広告を配信したり、購入を迷っているユーザーに対して背中を押すようなクーポンを配信したりすることが可能です。
この一貫したアプローチにより、顧客との接点を最大化し、購買確率の向上と顧客生涯価値の最大化を同時に実現できます。
4.2. オンオフ統合マーケティングの実現
楽天会員IDとオフラインデータの連携基盤「RMP-Data Management Platform(DMP)」を通して、オンラインとオフラインの購買データを統合することができます。これにより、従来では困難だったオンオフ統合マーケティング施策を実現できます。
実店舗で商品を購入したユーザーに対して、後日Web広告を配信したり、オンライン上の行動データに基づいて、実店舗への来店を促すクーポンを配信したりすることが可能になります。このようなシームレスな顧客体験の提供により、ブランドロイヤリティの向上と売上拡大を同時に達成できます。
4.3. 楽天経済圏におけるマーケティング効率の最大化
楽天グループには、楽天市場をはじめ、楽天トラベル、楽天カードなど、多様なサービスが存在します。楽天RMPは、これらのサービスと連携し、ユーザーの購買行動や興味関心に基づいたマーケティングを可能にします。
楽天経済圏という巨大なプラットフォームにおいて、ユーザーの行動履歴や属性データに基づいた最適なマーケティング施策を実施することで、従来の手法よりも高い費用対効果を実現できます。楽天市場での購入履歴がある顧客に対して、楽天トラベルでの宿泊プランを提案したり、楽天カードの利用特典と連動したキャンペーンを展開したりする相乗効果的なアプローチが可能です。
さらに、運用効率の観点でも大きなメリットがあります。広告配信からレポーティングまで、一つのプラットフォームで完結するため、運用工数を大幅に削減できます。広告予算の管理も柔軟で、最低出稿金額は5,000円からスタート可能です。
5. 効果測定と運用最適化
楽天RMP広告の真価は、詳細なデータ分析に基づいた効果測定と継続的な運用最適化にあります。効果的な広告運用を実現するためには、適切な指標の設定、レポーティングツールの活用、そしてPDCAサイクルの確立が不可欠です。
5.1. 重要指標とその活用方法
楽天RMP広告の効果測定で特に注目すべき指標は3つあります。
まず「ROAS(Return On Advertising Spend)」は、広告費用に対する売上の比率を表す指標です。広告費10万円で売上200万円を達成した場合、ROASは2,000%となります。一般的に、ROASが500%を超えると良好な数値とされており、この指標により広告投資の効率性を評価できます。
次に「クロスデバイスCVR(コンバージョン率)」は、PCやスマートフォンなど、デバイスをまたいだ購買行動を追跡する指標です。スマートフォンで広告を見て、PCで購入するといったユーザー行動も正確に把握でき、現代の多様なデバイス利用環境における真の広告効果を測定できます。
最後に「リーチ当たりの購買率」は、広告に接触したユーザーの中で、実際に購入に至った割合を示します。この指標により、広告のターゲティング精度を評価し、より効果的なセグメント設定につなげることができます。
5.2. レポーティングツールの効果的活用
楽天RMP広告の管理画面では、直感的に使えるレポーティングツールが提供されています。日次・週次・月次など、期間別の成果を簡単に確認でき、リアルタイムでの配信効果測定により、迅速な施策調整が可能です。
特に「カスタムレポート機能」は、広告グループごとの成果比較や、時間帯別の効果分析など、細かな条件設定が可能です。平日18時以降に高いCVRを記録しているといった、重要なインサイトを発見し、それを次の施策に活かすことができます。
5.3. PDCAサイクルの確立
効果的なPDCAサイクルを回すためには、体系的なアプローチが重要です。
「Plan(計画)」フェーズでは、過去の配信データを分析し、最適な配信条件を設定します。30代女性・週末午前中といったセグメントで高いCVRが出ている場合、そこに予算を重点配分する戦略を立てます。
「Do(実行)」フェーズでは、複数のクリエイティブやターゲティングパターンでテスト配信を行い、「Check(評価)」フェーズでは、各パターンのROASやCVRを比較分析します。
「Action(改善)」フェーズでは、効果の高かったパターンの予算を増額し、効果の低いものは停止するなど、素早く改善アクションを実施します。このサイクルを1-2週間単位で回すことで、継続的な成果改善が期待できます。
広告予算の管理も柔軟で、リアルタイムの配信効果測定により、配信開始後の反応が良くない広告は即座に停止し、効果の高い広告にすぐに予算を振り分けるといった、機動的な運用が可能です。これにより、広告費用対効果(ROAS)の最大化を図ることができます。
6. まとめ
楽天RMP広告は、楽天グループが提供する統合型マーケティングプラットフォームとして、従来の広告手法を大きく進歩させた革新的なソリューションです。約1億人の楽天会員データを活用した精密なターゲティング、楽天市場への出店有無に関わらない利用可能性、そして包括的なマーケティング機能により、企業のデジタルマーケティング戦略を根本的に変革する可能性を秘めています。
楽天RMP広告の成功要因は、正確なターゲティング設定、複数サービスの組み合わせ活用、そして継続的な効果検証と改善の3つに集約されます。楽天の会員データを活用し、商材に最適なユーザー層を見極めることで高いROASを実現し、RMP-Unified AdsとRMP-Direct Messageを組み合わせるなど、相乗効果を狙った施策展開により更なる効果向上が期待できます。
また、レポーティングツールを活用した定期的なPDCAサイクルの実行により、着実な成果向上を図ることができます。フルファネルマーケティングの実現、オンオフ統合マーケティングの展開、楽天経済圏における効率的なマーケティング活動により、従来では困難だった包括的な顧客アプローチが可能になります。
EC市場の競争が激化する中で、楽天RMP広告は企業のマーケティング戦略を次のステージへ引き上げる強力なツールとして位置づけられます。適切な運用により、認知拡大から購入促進、リピーター育成まで、顧客のライフサイクル全体を通じた効果的なマーケティング活動を実現し、持続的な売上成長と競争優位性の確立に貢献することができるでしょう。
監修者 : 田中 謙伍
株式会社GROOVE 代表取締役
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社。出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、マーケティングマネージャーとしてAmazon CPC広告スポンサープロダクトの立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。
【登録者数 5万人のYouTubeチャンネル】
たなけんのEC大学:https://www.youtube.com/@ec8531
執筆者 : 松岡 孝明
株式会社GROOVE マーケティング事業部
大学卒業後、大手百貨店に就職。店頭での販売やマーケティング経験を積んだ後、ECコンサルティング事業を行なう企業へ転職。現在は株式会社GROOVEにて、マーケティングを担当。EC運営に関するお役立ち情報の発信や、セミナーの企画などを行なっています。