メーカーが目指すべきDXの本質
「DX」という言葉はよく聞かれるようになりましたが、具体的にどう進めてよいかわからないという企業経営者・担当者は多いでしょう。ここでは、メーカーが目指すべきDXについて概要とポイントを解説します。
DXとは
DX(Digital Transformation)とは製品やサービス、ビジネスモデルをデータとデジタル技術によって変革し、競争上の優位を確立する取り組みのことです。デジタル化をとおして新しい価値を創造することだともいえるでしょう。
オフライン/オンライン市場の売上ランキングの比較
Amazonという販売プラットフォームが登場したことによって、大手企業でなくても多くの消費者に商品を届けられるようになりました。このAmazonが起こしたDXにより、市場にさまざまな変化が起きています。最近のシャンプー市場の売れ筋ランキングを例に見てみましょう。
オンライン販売で上位に位置するALLNA ORGANIC やNileを知っている方は、あまり多くないでしょう。花王やユニリーバなど大手企業のシャンプーは、詰め替え用を除いてAmazonの上位にはほとんど出てきません。
つまりAmazonという市場においては、Amazon D2Cのベンチャー企業が大手企業に取って代わっているのです。大手企業がデジタルシフトに遅れているともいえるかもしれません。
消費者が買い物をするときの情報収集行動
ここでは、消費者が買い物をするときの行動にどのような変化が起きているかを見てみましょう。
購入前に商品情報を何で調べるかという問いに対しては、Amazonが26%でもっとも多く、楽天市場が25%、店舗はわずか6%という結果でした。Amazonや楽天市場でポジションを築いておくことがいかに大切か、よくわかる結果だといえるでしょう。Amazonや楽天市場は口コミを調べる際にも使われており、信頼できる情報源として利用されていることがわかります。
メーカーのDX推進に必要な4つのステップ
メーカーのDX推進には、以下4つのステップが大切だと考えています。
- Webマーケティング・ECの取り組みをしている
- バリューチェーンが短く顧客との距離が近い
- 市場に新しい価値を提供している
- パーパス経営がなされている
①Webマーケティング・ECの取り組みをしている
メーカーのDX化においては、WebマーケティングやECの取り組みは不可欠だといえるでしょう。広告や販売手法、消費者とのコミュニケーション方法は以下のように変化しています。
例えば従来のテレビCMでは、その広告効果を詳しく検証する術がありませんでした。一方Web広告なら、狙ったターゲットだけにリーチでき、その反応や効果も検証できます。また今後はメーカーにおいても、消費者と双方向のコミュニケーションができるSNSやアプリなどの活用が重要性を増すでしょう。
②バリューチェーンが短く顧客との距離が近い
いかにバリューチェーンを短くし、顧客との距離を近づけるかも大切なポイントです。従来のバリューチェーンでは、社内だけでも商品企画部や営業部、マーケティング部などさまざまな部署が存在するうえ、社外にも商社や広告代理店などが存在します。
一方、D2Cならメーカーが消費者に直接商品を届けられます。バリューチェーンが短いことで、ブランディングや消費者データの活用、価格決定などさまざまな面でメリットが生まれるのです。
メーカーのDX化においては、以下の4点が重要になります。
- スピードを速める
- デジタルでつながる
- 一貫してつながる
- On/Off 競合を活かす
特にオンラインとオフラインの融合は、既存の小売市場でポジションを築いてきたメーカーだからこそできる取り組みです。例えばベビーカーのように実物を見て購入を判断したい場合は、「まずはオンラインで知ってもらってオフラインで買ってもらう」など、うまくオンラインとオフラインを融合させることで販売強化につながるでしょう。
③市場に新しい価値を提供している
DX化においては、市場に新しい価値を提供するという点も大切です。COHINA(コヒナ)というアパレルブランドの事例を紹介しましょう。
COHINAは身長150cm前後の小柄な女性をターゲットとしたアパレルブランドです。最近では東京ガールズコレクションにも登場しました。店頭ではなくオンラインでの販売だからこそ、狭いターゲットに絞ってもビジネスが成り立っているといえるでしょう。デジタルの活用によって新たな価値を生み出した事例です。
④パーパス経営がなされている
DX化の過程でやるべきことは、多岐にわたります。さまざまな取り組みのなかで社内の価値観や判断基準を一貫させるために有効なのが、「パーパス経営」です。
営とは、自社の存在意義を重視する経営手法です。
例えば、ECやSNS活用など新たな取り組みを進めるにあたり、1つ1つ方針やルールを定めていては取り組みが進みません。そこで、例えばコンビ株式会社のように「感動創造」という軸を共有することで、社員が主体性を持って判断できるようになります。パーパスが共有できていれば、細かなレギュレーションがなくても社内の取り組みが一貫性を持つようになるのです。
スターバックスやディズニーでは、細かいルールを設けていなくても企業理念が従業員に行き届いているため、取り組みの方針がぶれることはありません。DX化を進めるには、このような価値観・理念の共有が重要になります。
AmazonがDX・D2C推進に最適なプラットフォームといえる4つの理由
Amazonは、DX・D2Cの取り組みを進めるうえでぜひ活用したいプラットフォームです。その理由は以下の4つです。
- Amazon自身がDXの先駆者
- 「最高の顧客体験を提供する」会社
- フェアバリューな市場
- スピーディーかつ最小限のコストでD2Cの取り組みが可能
Amazonは、個人レベルでも手軽にD2C販売ができる環境を提供するなど、DXの先駆者として市場に新たな価値を提供してきました。
また、Amazonという販売チャネルはきわめてフェアバリューなマーケットです。例えば、価格を上げるとAmazonのアルゴリズムによって検索順位が下がるなど、常に顧客にとっての価値を反映したプラットフォームとなっています。フェアな市場だからこそ、Amazonのレビューを消費者が信頼しているとも考えられます。
スピーディーかつ最小限のコストでD2Cの取り組みができるAmazonは、次世代のモノづくりに欠かせないプラットフォームだといえるでしょう。
まとめ
本記事では、メーカーがDX化を推進するうえで重要なポイントについて解説しました。メーカーのDX化においては、WebマーケティングやD2Cに積極的に取り組む必要があります。そのなかでバリューチェーンを短くすることで消費者との距離を縮め、新しい価値を提供していくことが大切です。