Amazonプライムビデオ広告完全ガイド:メーカーEC事業者が知るべき新たな広告機会
Amazonプライムビデオ広告は、月間2,900万人超に届くプレミアムな映像リーチと、Amazonの購買・視聴データを活用した精緻なターゲティング/測定を兼ね備えた次世代CTVです。
メーカーECにとっては、テレビ並みの到達とEC直結のコンバージョンを一気通貫で設計できる新機会。本稿では価値・フォーマット・視聴者特性・計測(AMC)・インタラクティブ施策まで、成果に直結する実践ポイントを体系的に解説します。
1. はじめに - Amazonプライムビデオ広告とは
Amazonプライムビデオの広告サービスは、ストリーミング配信プラットフォーム上で展開される新しい形態のデジタル広告です。日本国内では月間平均約2,900万人以上の広告リーチを持ち、プレミアムストリーミングパブリッシャーの中で視聴シェア24%と最大規模を誇ります。
このプラットフォームの特徴は、単なる動画広告の配信にとどまらず、Amazonが持つ購買データやストリーミングデータと連動した高度なターゲティングと効果測定が可能な点にあります。従来のテレビCMとデジタル広告の利点を組み合わせた、まったく新しい広告体験を提供しています。
プライムビデオでは、オリジナルドラマやシリーズ、ライブスポーツ、独占アニメ配信など多様なコンテンツを展開しており、視聴者のエンゲージメントが非常に高いという特徴があります。2024年度には前年比55%増となる4,700万件のSNSエンゲージメントを記録しており、視聴者とコンテンツの結びつきの強さが証明されています。
2. プライムビデオ広告が持つ4つの価値
プライムビデオ広告は、コンテンツ、オーディエンス、インサイト、インパクトという4つの柱で構成された広告ソリューションを提供しています。
コンテンツの価値について、プライムビデオは世界的に人気の高いシリーズや映画、日本発のローカルオリジナル作品を豊富に揃えています。プレミアムなオリジナルコンテンツに加え、NBA、WNBAなどのライブスポーツコンテンツも配信しており、視聴者の好みに応じた多様な接点を持っています。この多様性により、ブランドは適切なコンテンツ文脈の中で視聴者にメッセージを届けることができます。
オーディエンスの側面では、プライムビデオ視聴者の平均世帯年収は一般平均と比べて15%高く、620万円となっています。また、93%の視聴者が日常的にAmazonで買い物をしており、プライムビデオ非視聴者と比較して毎月のAmazonでの支出金額が65%多いという特徴があります。つまり、購買意欲が高く実際の購買行動につながりやすい視聴者層にリーチできるのです。
さらに興味深いのは、プライムビデオ視聴者は広告を受け入れやすく影響力が高いという点です。日本の成人平均と比較して、ビデオやテレビ番組で見た広告をきっかけにブランドを発見する傾向が43%高く、友人や家族に新製品について伝える傾向が64%高く、広告で見たブランドを購入する傾向が33%高いことが調査で明らかになっています。
インサイトの価値として、プライムビデオはショッピング、ブラウジング、ストリーミングなどAmazon独自のシグナルを統合した優れたオーディエンスインサイトを活用できます。これにより、単なる視聴データだけでなく、実際の購買行動や興味関心と連動したターゲティングが可能になります。
インパクトの側面では、インタラクティブ性、プランニングツール、測定ソリューションを活用した高インパクトの広告フォーマットにより、広告パフォーマンスを向上させることができます。視聴者第一の広告設計により、予測可能な広告パターン、多様な広告体験、適切なタイミングでの関連性の高いメッセージ配信が実現されています。
3. 広告フォーマットの全体像
プライムビデオ広告には大きく分けてローテーショナルメディアとスポンサーシップという2つの販売形態があり、それぞれに適した広告フォーマットが用意されています。
ローテーショナルメディアは、業界標準の取引タイプ(PG:固定定価・在庫保証型、PD:固定定価・在庫非保証型、PA:プライベートオークション)を活用し、複数のタイトルにわたってブランドメッセージを発信する方式です。Run-of-Service、Best of Originals、Best of TV、Best of Movies、Top Trendingなどのカテゴリーや、アクション、コメディ、ドラマ、SF、サスペンスといったジャンル別、さらにはバレンタインデー、母の日、父の日などのシーズン別での展開が可能です。
ドラマや映画の前(プレロール)と最中(ミッドロール)に流れる広告が基本となり、視聴者に自然な形でブランドメッセージを届けることができます。
スポンサーシップは、専用のプレゼンスが保証されたプレミアムプレースメントにより、特定のAmazonオリジナルタイトルと協賛する形式です。タイトル協賛バンパーやプレロール動画広告などを組み合わせることで、人気コンテンツと強く結びついたブランド体験を提供できます。
さらに、2026年以降にリリース予定の新しい広告フォーマットとして、First Impression Take Over(FITO)とインタラクティブ広告が注目されています。
FITOは、視聴者がその日最初に視聴するプレロール枠を独占的に獲得できる形式で、視聴セッションの開始時から第一印象を重視したテイクオーバーで注目を集めることができます。エンゲージメントの高い視聴者層へのリーチ拡大、視聴セッションに最初に接触することでのブランド認知およびリコール促進、プレミアコンテンツとの連携、主要イベントなどのタイミングでのリーチ拡大といったメリットがあります。
インタラクティブポーズ広告は、視聴者がプライムビデオのストリーミングセッションを一時停止した時に表示される高インパクトのインタラクティブフォーマットです。ブランドの可視性を向上し、視聴者とのエンゲージメント接点を増加させます。従来のプライムビデオ広告体験の枠外でプレミアムなコンテンツと一緒に表示されるため、視聴者が好むタイミングで情報を確認できるという利点があります。
このインタラクティブポーズ広告には、Amazonストアで商品を販売する広告主向けのショッパブルフォーマットと、Amazon外で販売する広告主向けのディスカバリーフォーマットの2種類が用意されています。
ショッパブルフォーマットでは、「カートに入れる」「お得情報バッジ」「ブランドストアへ」といったアクションをビデオクリエイティブから直接実行でき、Amazonでのショッピング、購入意向、コンバージョンを促進します。
一方、ディスカバリーフォーマットでは、「もっと詳しい情報をご希望ですか?」「見積もりを受け取る」「予約をする」といったアクションを提供し、自社サイトでのエンゲージメント、検討、リードジェネレーションを促進します。
さらに、リアルタイムバッジやCTA(コール・トゥ・アクション)バッジといった、視聴中に表示されるインタラクティブ要素により、エンデミックブランド(Amazon上で販売する企業)にはContent to Commerceの実現を、ノンエンデミックブランド(Amazon外で販売する企業)には認知と発見の機会を提供します。
4. 視聴者特性とターゲティングの優位性
プライムビデオの視聴者は、幅広い世帯にリーチできる一方で、特定の特徴を持つ貴重なオーディエンスでもあります。視聴者の男女比は男性55%、女性45%とバランスが取れており、年齢分布も18-24歳から65歳以上まで各世代に均等に広がっています。
視聴者の特性として特筆すべきは、テクノロジーに精通しており、ブランド意識が高く、お得な情報を求める傾向があるという点です。新しいテクノロジーの使用に非常に自信を持っている傾向が一般平均より85%高く、製品やサービスのオンラインレビューを信頼する傾向が46%高く、よく知られたブランドに対して高めの金額を払うことに前向きな傾向が22%高く、積極的にお得な価格を探す傾向が11%高いという調査結果が出ています。
プライムビデオで独占視聴者層へリーチできるという点も重要です。プライムビデオ視聴者の15%は他のストリーミングサービスを視聴しておらず、18%は従来型テレビを視聴していません。つまり、プライムビデオでしかリーチできない層が存在するということです。これは、他の広告チャネルでは接触できない貴重なオーディエンスにアプローチできることを意味します。
ターゲティングの仕組みとして、プライムビデオは数多くのAmazon独自のシグナルを活用します。ショッピングとプライムの購買データ、ストリーミングサービス(Prime Video、Fire TV、Twitch)での視聴行動、リスニングサービス(Amazon Music、Alexa、Audible)での聴取行動など、複数のタッチポイントからのデータを統合することで、より関連性の高いオーディエンスにリーチできます。
例えば、ビデオゲームのライブストリーミングを視聴している層、ひいきのスポーツチームを応援している層、シリーズ作品や映画を観る層、新しい音楽を発見する層、ポッドキャストを聴く層など、様々な興味関心と行動パターンに基づいたセグメンテーションが可能です。
さらに、ブランドや製品を探すブラウジング行動、実際のショッピング行動、広告へのエンゲージメント行動といった購買ファネル全体にわたるシグナルを組み合わせることで、認知から購入までのあらゆる段階の消費者にアプローチできます。
5. 測定とインサイト活用
プライムビデオ広告の大きな強みの一つが、充実した測定ソリューションとインサイト活用の仕組みです。Amazon Marketing Cloud(AMC)を通じてファーストパーティインサイトとサードパーティの機能を組み合わせることで、真のフルファネル型インサイトを実現しています。
AMCには3つの特徴があります。第一に、簡素化されたアクセスとして、自然言語を使用して迅速にインサイトを得るAI活用ソリューションが提供されています。専門的な知識がなくても、データ分析を行えるようになっています。
第二に、拡張されたシグナルとして、包括的なストリーミング、ショッピング、ブラウジングのシグナルを用いたクロスチャンネル測定が可能です。単一のチャネルだけでなく、複数のタッチポイントを横断した顧客行動を把握できます。
第三に、インテリジェントデータ連携として、シンプルなユースケースから高度なモデリングまで、シームレスなデータコラボレーションが実現されています。
具体的な測定ソリューションとしては、リーチ・フリークエンシー測定、Amazonブランドリフト調査、長期売上効果の測定、マーケティングミックスモデル(MMM)などが用意されています。また、Video Research社、Macromill Group社、Intage社といったサードパーティの測定パートナーとも連携しており、多角的な効果検証が可能です。
プランニング段階では、Prime Video広告を中心として、プランニングとインサイト、オーディエンス・ターゲティング及びオプティマイズ、測定とレポーティングという3つのフェーズが循環する仕組みになっています。Plan、Activate、Measureのサイクルを回すことで、継続的な広告効果の改善が実現されます。
6. インタラクティブ広告による成果向上
インタラクティブ広告の効果については、米国での実績データが示されています。Kantar社の調査によると、インタラクティブ動画広告は非インタラクティブフォーマットの対照群と比較してブランド認知度が30%向上し、購入意向が28%向上したことが確認されています。
さらに、インタラクティブ性のあるPrime Video広告は、インタラクティブ性のない広告と比べて、商品詳細ページ閲覧(DPV)が4.6倍以上、カートへの追加が6.3倍以上、注文件数が2.5倍に増加したという実績があります。
このように、インタラクティブ性はフルファネル全体にわたってインパクトを促進します。キャンペーンの焦点が認知、検討、コンバージョンのいずれであっても、インタラクティブ性によって効果が向上するのです。
また、Prime Video広告にインタラクティブポーズ広告を追加することでキャンペーンの成果がさらに向上することも確認されています。米国のデータでは、ブランド検索率が22%上昇、商品詳細ページ閲覧率が24%上昇、購入率が13%上昇という結果が出ています。
ライブスポーツにおいても、オーディエンス・ベースド・クリエイティブやライブスポーツインタラクティブ動画広告といった革新的な広告フォーマットの展開が予定されています。放送テレビの高品質な視聴体験と、世帯ごとにパーソナライズされた広告配信の仕組みを融合させることで、スポーツコンテンツならではの盛り上がりとブランドメッセージを効果的に結びつけることができます。
7. まとめ - プライムビデオ広告の可能性
Amazonプライムビデオ広告は、ストリーミングテレビ広告のフルファネルソリューションを先導する存在として進化を続けています。2026年以降も、ローテーショナルメディア、スポンサーシップ、First Impression Take Over(FITO)、インタラクティブ動画広告、インタラクティブポーズ広告といった多様なフォーマットが順次リリースされる予定です。
メーカーのEC事業者にとって、プライムビデオ広告が提供する価値は次の点に集約されます。
まず、購買意欲が高く実際の購買行動につながりやすい質の高いオーディエンスにリーチできることです。平均世帯年収が15%高く、93%が日常的にAmazonで買い物をしており、毎月の支出が65%多いという視聴者特性は、広告投資の効率を高めます。
次に、Amazon独自のショッピング、ブラウジング、ストリーミングデータを統合した高度なターゲティングにより、適切なメッセージを適切な視聴者に適切なタイミングで届けられることです。他のストリーミングサービスや従来型テレビではリーチできない独占視聴者層へのアプローチも可能です。
そして、Amazon Marketing Cloudを通じた包括的な測定とインサイト活用により、認知から購入までのフルファネルでの効果を可視化し、継続的な改善ができることです。ファーストパーティデータとサードパーティの測定パートナーを組み合わせることで、多角的な効果検証が実現されます。
さらに、インタラクティブ広告フォーマットの活用により、視聴者が好むタイミングでの情報提供やアクションの促進が可能になり、ブランド認知度が30%向上、購入意向が28%向上、カートへの追加が6.3倍以上といった具体的な成果が期待できます。
視聴者第一の広告設計により、予測可能で一貫性のある広告パターン、多様で興味を惹きつけ続ける広告体験、統合性のあるシームレスな広告体験が実現されており、視聴体験を損なうことなくブランドメッセージを届けられます。
プライムビデオは月間2,900万人以上にリーチし、プレミアムストリーミングパブリッシャーの中で視聴シェア1位という圧倒的な規模を持ちながら、2024年度には前年比55%増の4,700万件のSNSエンゲージメントを記録するなど、視聴者とコンテンツの結びつきも非常に強いプラットフォームです。
この規模とエンゲージメント、そしてAmazonならではのデータとテクノロジーを組み合わせた広告ソリューションは、メーカーのEC事業者にとって見逃せない機会となっています。ブランド認知の向上から実際の購買行動促進まで、一貫した戦略のもとで展開できるプライムビデオ広告は、今後のデジタルマーケティングにおいて中心的な役割を果たしていくでしょう。

監修者 : 田中 謙伍
株式会社GROOVE 代表取締役
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社。出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、マーケティングマネージャーとしてAmazon CPC広告スポンサープロダクトの立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。
【登録者数 5万人のYouTubeチャンネル】
たなけんのEC大学:https://www.youtube.com/@ec8531

執筆者 : 松岡 孝明
株式会社GROOVE マーケティング事業部
大学卒業後、大手百貨店に就職。店頭での販売やマーケティング経験を積んだ後、ECコンサルティング事業を行なう企業へ転職。現在は株式会社GROOVEにて、マーケティングを担当。EC運営に関するお役立ち情報の発信や、セミナーの企画などを行なっています。

