FBAマルチチャネルサービスとは? メリット・デメリットや注意点を徹底解説!
ECサイト運営に興味がある方や、既に運営している方の中には、在庫管理や発送手配に時間が取られ、肝心の販売管理に集中できないと感じることもあるかもしれません。
このような課題を解決してくれるのが、FBAマルチチャネルサービスです。Amazonの物流システムを活用することで、発送から在庫管理まで一括で任せることができ、業務効率を大幅に改善できます。
本記事では、FBAマルチチャネルサービスのメリットとデメリットを詳しく解説します。
目次
1. FBAマルチチャネルサービスとは
FBAマルチチャネルサービスは、Amazon以外のECサイトで販売している商品にも、Amazonの物流を活用できるサービスです。
商品発送や配送、在庫管理までをAmazonが代行するため、業務を効率化できます。このサービスを利用するには、Amazon出品サービスへの登録が必要ですのでご注意ください。
1.1. 特徴
FBAマルチチャネルサービスの特徴については、以下で詳しく説明します。
・代金引換に対応、FBAマルチチャネルサービスの決済
・納品書・配送ラベルをカスタマイズできる
・無地のダンボールに対応、納品先FCの場所
・返品にも対応できる
1.1.1. 代金引換に対応、FBAマルチチャネルサービスの決済
FBAマルチチャネルサービスでは決済は自社サイトや他のECモールが担当し、Amazonは主に商品の保管、梱包、配送などの物流を代行します。代金引換サービスも利用可能で、その手数料は1件あたり324円(税込)です。
他の配送業者の代金引換手数料を比較すると、ヤマト運輸と佐川急便では1万円未満の取引で300円(税抜)となっており、ほぼ同額です。唯一ゆうパックが260円と少し割安です。
1.1.2. 納品書・配送ラベルをカスタマイズできる
FBAマルチチャネルサービスを利用する際、段ボールに貼られる配送ラベルの販売元や、同梱される納品書の店舗名をカスタマイズすることができます。
これにより、他のECサイトで購入したユーザーが「Amazonから商品が届いた」と誤解し、クレームにつながるリスクを軽減できます。
外箱に貼られる配送ラベルには「アマゾン・ロジスティクス(株)」の名前が印字されますが、それに加えて販売元として、自社の店舗名や会社名を表示させることができます。
また、納品書にも同様に、販売サイトの名称や会社情報を反映することができます。これらの設定は、セラーセントラルから簡単に行えます。
1.1.3. 無地のダンボールに対応、納品先FCの場所
2013年9月11日より、FBAマルチチャネルサービスでは、Amazonのロゴが印刷されていない無地のダンボールを使用した発送オプションが提供され始めました。2023年3月の時点では、無地ダンボール対応のフルフィルメントセンター(FC)は以下の5カ所に拡大しています。
神奈川県にある小田原FC(FSZ1)、愛知県の多治見FC(NGO2)、埼玉県の川島FC(HND3)、大阪府の大東FC(KIX2)、埼玉県の川越FC(NRT5)です。
無地ダンボール対応をしていないフルフィルメントセンターを利用する場合、直接メールでリクエストを行う必要があります。納品先のフルフィルメントセンターは、商品カテゴリーやその他の条件に応じてAmazonが自動的に割り当てますが、カテゴリーごとに担当センターが決まっており、以下のように分類されています。
①ファッション以外(小型・標準サイズ)
・小田原FC、堺FC、鳥栖FC、市川FC、多治見FC
②ファッション以外(大型商品)
・川島FC、大東FC、鳥栖FC、八千代FC
③ファッション商品
・川越FC
特定のフルフィルメントセンターに商品を納品したい場合は、商品カテゴリーやサイズに応じて、1商品あたり5~9円の追加料金を支払うことで、希望するセンターを選択することができます。
1.1.4. 返品にも対応できる
FBAマルチチャネルサービスで販売された商品について、購入者から交換、返品、または返金の依頼があった場合、まず出品者がその可否を判断します。返品を受け付ける際は、返金処理を行う必要があります。これらの手続きは、セラーセントラルを通じて管理できますが、他の方法でも対応可能です。
セラーセントラルを利用する場合、購入者は返品商品を指定されたフルフィルメントセンターに送り返すことになります。この際、出品者は購入者に発送ラベルを提供しますが、返送料は購入者が負担することとなります。
返品された商品がフルフィルメントセンターに到着し、確認が完了すると、再販可能な状態であれば、そのまま出品者の在庫に戻されます。一方、返品された商品が破損している場合は、その破損状況に応じた追加対応が必要となります。
特にファッションカテゴリーの商品(衣類、ファッション小物、靴、バッグ類)に関しては、購入者が「30日間返品送料無料」を利用した場合、商品サイズに応じて245円から1,258円の手数料(作業および配送費用)が出品者に発生します。
1.2. 手数料
FBAマルチチャネルサービスの手数料については、以下で詳しく説明します。
・基本料金
・楽天スーパーロジスティクスとの比較
1.2.1. 基本料金
「通常配送の料金表」は以下の通りです。
「お急ぎ便の料金表」は以下の通りです。
「お届け日時指定便の料金表は以下の通りです。
引用元:Amazon(マルチチャネルサービス出荷依頼のFBA配送代行手数料)
1.2.2. 楽天スーパーロジスティクスとの比較
AmazonのFBAとよく比較されるのが、もう一つの大手モールである「楽天市場」が提供する物流サービス、楽天スーパーロジスティクス(RSL)です。RSLは、商品の「入荷、保管、梱包、配送」を楽天が一括で代行するサービスで、楽天での販売をスムーズにサポートします。
楽天の物流サービスでは、あす楽に対応しているほか、楽天市場のイベントスケジュールに合わせた出荷量の増減にも柔軟に対応しています。これにより、配送品質向上制度(配送基準を満たした商品に「配送認定ラベル」が付与される制度)の一部条件をクリアすることも可能です。
さらに、他のモールで注文された商品の配送にも同じ料金が適用されるため、複数のモールで出店している事業者にとっては、コスト面でのメリットも享受できます。
専任のコンサルタントによるサポートが、サービスの安定運用まで受けられる点は大きな魅力です。ただし、大型商品の取り扱いがないことや、在庫保管料が比較的高めに設定されている点には注意が必要です。
- 配送リードタイム
・FBA:注文が確定してから3日以内に商品をお届け、一部地域では当日配送も可能
・RSL:遅くとも翌日には出荷され、15:30までの指示であす楽対応も可能
- 配送品質
・FBA:複数の配送業者(大手含む)と提携しているため、配送品質に差が出ることがある
・RSL:日本郵便と連携しているため、配送品質が安定している
- 他モールへの配送時の料金
・FBA:Amazon以外のモールでの配送は、料金が異なる場合がある
・RSL:他のモールでも、同じ料金で対応可能
2. FBAマルチチャネルサービスの3つのメリット
FBAマルチチャネルサービスには多くのメリットがあり、これを正しく活用することで、EC事業の大きな成長が期待できます。今回は、特に知っておきたい重要なメリットを3つご紹介します。
・マルチチャネルの在庫を一元管理できる
・Amazonの顧客基盤を活かした顧客獲得
・代引きやお急ぎ便も利用可能
2.1. マルチチャネルの在庫を一元管理できる
自社サイトを含め、複数のECサイトで同じ商品を販売している場合、在庫の保管場所に悩んでいる方も少なくないでしょう。複数の倉庫で在庫を管理していると、在庫管理が複雑になり、特定のECサイトで在庫切れが発生することがあります。その結果、商品が売り切れとなり、販売機会を逃すリスクが高まります。
FBAマルチチャネルサービスを利用すれば、FBA倉庫を活用して在庫の保管を一元化できるため、在庫切れによる販売機会の損失や保管場所に悩む必要がありません。
EC事業の売上を拡大するには、複数のECサイトを運営し、それぞれのユーザー特性を把握した上で、適切な管理と戦略を展開することが欠かせません。販売戦略に専念するためには、FBAマルチチャネルサービスを活用し、在庫管理を一元化することが重要です。
2.2. Amazonの顧客基盤を活かした顧客獲得
Amazonの顧客基盤を活用し、新たな顧客を獲得できるチャンスがあることも大きなメリットです。
Amazonは世界的に知られたECプラットフォームであり、優れた顧客対応を提供しているため、信頼性が高く、ユーザーも安心して利用できます。注文後の発送が遅れると、顧客からのクレームに発展する可能性があります。
自社サイトに比べて幅広いユーザー層が利用しているため、商品の認知度が向上し、購入される可能性も高まります。
2.3. 代引きやお急ぎ便も利用可能
ECサイトの利用者の中には、クレジットカードを持っていない人や、カード決済を好まない人も一定数存在します。
代金引換に対応することで、カード決済を利用しない層への販売機会を逃さずに済みますが、代金引換が利用できない地域もあるため、その点には注意が必要です。
さらに、Amazon以外のECサイトでも日時指定やお急ぎ便が利用できるため、顧客満足度の向上に大きく貢献します。
3. FBAマルチチャネルサービスのデメリット3つ
これらのデメリットを理解していないと、トラブルや不具合が発生した際に混乱する可能性があります。今回は、そのデメリットを3つご紹介します。
・配送業者が指定できない
・日時指定できない商品もある
・一定の費用や制約がある
順を追って解説していきます。
3.1. 配送業者が指定できない
配送業者は日本郵便やヤマト運輸など、約10社の中から選ばれますが、どの業者が担当するかが確定するまでには少し時間がかかります。そのため、すぐにユーザーへ配送業者の問い合わせ番号を知らせることができません。
配送業者が判明したら、できるだけ早くユーザーに連絡することをおすすめします。
3.2. 日時指定できない商品もある
日時指定ができない商品があることも、デメリットの1つです。
商品サイズの三辺の合計が160cmを超える場合は、日時指定便の利用ができません。また、商品が小さい場合には、定形外郵便やクリックポストを利用した方が、コストを抑えられることもあります。
取り扱う商品の種類によって異なるため、初めの段階で十分に確認しておくことが重要です。
3.3. 一定の費用や制約がある
AmazonのFBAを利用する場合、商品の保管と発送を依頼するため、在庫保管手数料や発送代行手数料が発生します。
さらに、FBAには厳格なルールがあり、それに違反すると、最悪の場合アカウントが停止され、FBAマルチチャネルサービスの利用も停止される可能性があります。
FBAマルチチャネルサービスを利用する際は、メリットとデメリットを十分に理解した上で活用することが重要です。
4. FBAマルチチャネルサービスの4つの注意点
FBAマルチチャネルサービスを利用する際に、特に注意すべきポイントが4つあります。
・商品サイズごと、販売実績により在庫保管制限がある
・発送のタイミングにムラがある
・対応できないプラットフォームが存在する
・Amazonからの発送だと表記される
順を追って解説していきます。
4.1. 商品サイズごと、販売実績により在庫保管制限がある
Amazonフルフィルメントセンターにおける在庫保管には、「在庫保管制限」という上限があります。この制限は、Amazonでの販売分だけでなく、他のECサイトで販売する商品も含めたFBAに保管している全商品の合計数に適用されます。
FBAを新規で利用する場合、すべての出品者に対して一律の在庫上限が設定されています。
小型・標準サイズの商品は2,000点、大型商品は500点がその上限です。この制限を超えると、在庫が減少するまで新たな商品をフルフィルメントセンターに納品することが一時的にできなくなります。そのため、商品の売れ行きを見ながら、納品する商品の種類と数量には慎重に注意を払う必要があります。
新規利用者の在庫保管制限は一律ですが、その後は月間の販売実績に応じて毎週上限が見直されます。この際、在庫回転率が基準となり、「過去1ヶ月の販売数×12÷在庫数」によって計算されます。上限を引き上げるためには、この在庫回転率をいかに向上させるかが重要なポイントとなります。
4.2. 発送のタイミングにムラがある
商品によっては、注文後すぐに発送される場合もありますが、発送に時間がかかることもあり、事前に確定することはできません。特に大型連休前や夕方以降は物流量が増えるため、発送に時間がかかりやすくなります。
AmazonのFBAでは当日や翌日発送に対応していますが、FBAマルチチャネルサービスを利用する際には、余裕を持ったスケジュールで計画することが重要です。
4.3. 対応できないプラットフォームが存在する
フリマアプリでの利用が禁止されている点は、特に注意が必要です。
フリマアプリは個人間取引を基本としているため、商品が手元になく、倉庫に保管されている場合、確認ができずトラブルの原因となる可能性があります。
原則として手元にある商品しか出品できません。ルールに違反すると、アカウント停止のリスクがあるため、十分ご注意ください。
4.4. Amazonからの発送だと表記される
自社ECサイトで販売している商品でも、 発送元としてAmazonと表示されます。
段ボールは無地にできるものの、 配送ラベルに記載されたAmazonの名前は削除できません。トラブルを防ぐためにも、あらかじめ商品がAmazonの倉庫から発送されることを顧客に伝えておきましょう。
5. FBAマルチチャネルサービスの申込方法
FBAマルチチャネルサービスの利用方法について説明します。
FBAマルチチャネルサービスを利用するには、まずAmazon出品サービスへの登録が必要です。すでにAmazonに出店している場合は、FBAマルチチャネルサービスの利用手続きを進めます。まだ登録が済んでいない場合、最初に出品サービスへの登録を完了させてください。
手順は以下の通りです。
- Seller Centralの画面から「在庫」タブを開き「在庫管理」をクリック
- マルチチャネルサービスを利用したい商品を選択(複数選択可能)
- 複数の商品を選択した場合「一括変更」を選択
- 「FBAマルチチャネルサービス依頼内容を新規作成」をクリック
- 情報を入力し完了
注文が入ると、Amazonの倉庫から自動的に商品が発送されます。
在庫の変更や追跡番号の更新は、セラーセントラルで確認することができます。
6. まとめ
本記事では、FBAマルチチャネルサービスのメリットやデメリット、注意点について詳しく解説しました。ECサイトの運営では、在庫管理や出荷作業が手間となることがあります。
こうした問題を解決する手段として役立つのが、Amazonの高度な物流ネットワークを利用できるFBAマルチチャネルサービスです。このサービスを活用することで、効率的な在庫管理や迅速な配送が可能になります。
FBAマルチチャネルサービスを導入することで、 在庫管理がより効率化され、素早い出荷対応が実現します。その結果、業務負担の軽減や売上向上に大きく貢献します。
FBAマルチチャネルサービスを活用して、ECビジネスをさらに成長させましょう。
FBAマルチチャネルサービス利用に関するお困りごとは「株式会社GROOVE」にご相談ください!
FBAマルチチャネルサービスの利用に関する疑問やご相談は、Amazon専門コンサルである「株式会社GROOVE」までお問合せ下さい。GROOVEでは多くのメーカー様を支援してきた中で培った、専門的な知見とノウハウを駆使し、FBAマルチチャネルサービスをより効率的かつ戦略的に活用できるアドバイスを提供します。また、FBAマルチチャネルサービス以外でも、Amazonに関する疑問点がございましたら、どんな些細なことでもお気軽にお問い合わせください!
監修者 : 田中 謙伍
株式会社GROOVE 代表取締役
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社。出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、マーケティングマネージャーとしてAmazon CPC広告スポンサープロダクトの立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。
【登録者数 5万人のYouTubeチャンネル】
たなけんのEC大学:https://www.youtube.com/@ec8531
執筆者 : 松岡 孝明
株式会社GROOVE マーケティング事業部
大学卒業後、大手百貨店に就職。店頭での販売やマーケティング経験を積んだ後、ECコンサルティング事業を行なう企業へ転職。現在は株式会社GROOVEにて、マーケティングを担当。EC運営に関するお役立ち情報の発信や、セミナーの企画などを行なっています。