Amazon Marketing Cloud|今注目のAMCでできることと活用方法
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Amazon Adsが提供しているデータクリーンルームの一つに、Amazon Marketing Cloudがあります。
デジタルマーケティングが普及するなか、膨大な顧客データの分析や活用は不可欠です。一方、個人情報保護の観点から、データの活用には細心の注意を払う必要があります。
このような情勢のなか、個人情報を安全に保護しながら企業がマーケティングの分析や活用を行える仕組みが、Amazon Marketing Cloudです。
この記事では、Amazon Marketing Cloudの概要や導入手順、活用事例を詳しく紹介します。
1. Amazon Marketing Cloudとは
ここではまずAmazon Marketing Cloudの概要についてお話します。
1.1 概要
Amazon Marketing Cloud(AMC)とは、Amazonが提供しているデータクリーンルームの一つです。データクリーンルームとは、データ保護や分析などの特定の目的のために、限られた人がアクセスできる環境を指します。個人情報を安全に保護しながら、企業がマーケティングやビジネス分析などのデータ分析ができる環境です。
Amazon Marketing Cloudは、広告主ごとにインスタンスの作成が行われ、Amazon社が提供する広告プロダクトの実績データが格納されていく仕組みとなります。データクリーンルームであるため、Amazon Marketing Cloud内のデータ閲覧やダウンロードはできません。
1.2 注目される背景
AMCが注目される背景には、世界的に広がるプライバシー保護意識の高まりと法規制があります。特に3rd party cookieに対する規制が大きな影響を及ぼしています。
cookieとは、Webサイトにおける行動ログや入力したユーザー情報を保管しておく仕組みです。これらの情報はデータとして収集・分析し、広告出稿や効果測定に使われます。cookieには大きく分けると2種類が存在し、実際にユーザーが訪れたWebサイト上で発行されたcookieは「ファーストパーティークッキー」と呼ばれています。
それに対して、昨今問題視されている「サードパーティークッキー」はユーザーが訪れたWebサイトとは異なるドメインから設定されたcookieを指します。サードパーティークッキーを利用することで、複数のWebサイト上で同一ユーザーの行動が追跡でき、商品に興味のありそうなユーザーを判別することができます。
しかし、個人情報やプライバシーの観点からこのような広告ターゲティングの方法が疑問視され、規制されるようになりました。現在では電気通信事業法や個人情報保護法の改正により、プラットフォーマーが利用者の情報を外部送信する際に厳しい規制が設けられています。
その結果cookieを利用したリターゲティング・リマーケティングを実施する難易度が高くなりました。そのような中で生きたユーザーの購買情報を活用できるAmazon広告に注目が集まっているのです。ただ、AMC以前のAmazon広告は分析できる幅が決して広くはありませんでした。
1.3 AMCの進化
Amazonにはディスプレイ効果、リスティング効果、FireTVのような予約型メニューなど、潜在層から顕在層まで幅広いユーザーにリーチできる広告プロダクトがあります。しかし、それぞれのプロダクトで配信システムが違うため、これらを統合した結果検証が難しいという課題もありました。
このような問題を解決するために登場したのが、Amazon Marketing Cloudです。AMCの登場によって、従来のツールでは困難だった、Amazon内外のユーザーの行動を分析できるようになったため、広告効果の可視化やユーザー心理の理解に期待が高まっています。
Amazon Marketing Cloudは、cookie規制によるデジタル広告の計測に対する影響への対応に効果が期待できます。こうした状況下において、Amazonが所有しているユーザーIDを計測のときに利用することで、セッションでcookieを跨いだ行動でもデータの紐づけが行えます。
2. Amazon Marketing Cloudの特徴
次に、Amazon Marketing Cloudの特徴を解説します。
2.1.Amazon Adsの活用をメインとして提供される
Amazon Marketing Cloudは、Amazon Adsの活用を目的に提供されているサービスです。そもそも、AMCはAmazonの提供するデータクリーンルームであると説明をしました。データクリーンルームに共通していることですが、広告プロダクトの配信効果分析を行うことを目的に提供されています。
AMCの場合はAmazonが提供する広告表示サービスであるAmazon Ads(Amazon広告)に特化したものであり、Amazon内やAmazonが連携する外部サイトで配信された広告についての分析を可能にするものです。
もちろんAMC以前のAmazon広告も、Amazonの管理画面上から分析をすることはできましたが、基本的なものでした。AMCの登場によって、各広告プロダクトの横断的な分析など、より詳細で緻密な分析が可能となったのです。
2.2.データ管理はAmazon IDが基になっている
Amazon Marketing Cloudでは、データ管理の基盤にAmazon IDを使用しており、莫大なユーザーの行動履歴やサービス履歴からデータを作成しています。
例えば、閲覧した商品や購入商品の情報から「どのようなカテゴリーに興味関心があるか」「興味のあるコンテンツは何か」などです。興味関心データだけでなく、年齢や性別、地域などもAmazon IDをベースに管理されています。
ただしこれらのデータの細かい内容については出品者側からは確認することもできなければ、独自に編集を行うこともできません。
2.3.外部データと連携できる
Amazon Marketing Cloudで扱えるデータは、Amazon内のものだけでなく、さまざまなデータと連携して使えるのも特徴です。
Amazon上に用意されているデータに、企業が自社で収集して保有しているファーストパーティデータを加えることもできます。例えば、自社のWebサイトで収集した顧客の氏名や電話番号、メールアドレス、住所などのデータやお店に来た顧客の購買データなどです。
これらのデータはアップロードして連携が可能で、Amazon IDと突合される形で取り込むことができます。アップロードする際はハッシュ化したデータを送信するため、データのプライバシーも遵守される仕組みです。また、大量のデータを収集して管理するプラットフォーム(DMP)も一部連携することができます。
これにより自社ECサイトでは購入しているもののAmazonでは購入していないオーディエンスなどを作成することも可能になり、より効率的に新規顧客の獲得、市場シェアの拡大を狙うことができるのです。
3. AMCでできること
AMCの活用方法は様々ですが、大きく分類すると下記のような3つのことが可能になります。
・Amazon広告の効果についての詳細な分析
・Amazonの購買データを基にしたオーディエンスセグメント
・自社ECの購買データを利用した広告配信
3.1. AMC分析
AMCにはAmazon スポンサー広告とAmazon DSPの配信データがデフォルトで連携されており、詳細な広告イベントデータを分析することが可能です。Amazon広告の効果について、広告プロダクトを横断して、広告のクリック、インプレッション、コンバージョンの関連性などを分析し、広告活動の効果をより正確に測定できます。
従来のマーケティング分析では、ユーザーの購買行動の一部しか把握できませんでした。Amazon内で広告を経由して購入していたとしても、最終的に購買に至ったポイントのみで、そこに至るまでにどのような順番で広告を踏んでいたのかなどはわからなかったのです。
しかしAMCを活用すれば、ユーザーが広告を通して商品に興味を持った後どのようにして購買に至ったのかを明らかにすることができます。またどの広告プロダクトやターゲティングからなら新規の顧客が購入に至っているのかなどの分析も可能です。
このように、AMCを使えば、従来の分析ツールでは得られなかった深いインサイトを提供することで、ユーザーのAmazon内外の行動を総合的に分析し、ユーザー一人ひとりのカスタマージャーニーが可視化できます。これによりマーケティング戦略の最適化を図ることができるのです。
3.2. AMCオーディエンス
二つ目の大きな特徴は、AMCオーディエンスといわれる独自のオーディエンスを作成できる点です。
AMCオーディエンスは2023年5月にリリースされた比較的新しい機能です。AMCオーディエンス実装以前のAMCは上記のデータ分析が主な機能でした。しかし、このアップデートにより、AMC上で抽出したユーザーをオーディエンス化し、Amazon DSPでの広告配信に活用することが可能となりました。
もともとAmazon DSP広告には、Amazon独自のデータを活用したセグメントが存在します。これはAmazon側で取得したデータをもとに作成されたもので、具体的にはデモグラフィック、特定商品への興味関心、ライフスタイルなどのセグメントが含まれます。
一方AMCオーディエンスでは、AMCで分析したデータをそのままAmazon DSPでのターゲティングに活用することができます。これにはSQLクエリを使用する必要がありますが、既存のセグメントにないオーディエンスを自由に作成することが可能です。
これにより、AMCを使ってデータを分析しインサイトを得るだけでなく、得られた洞察をもとに、より効果的な広告戦略を策定・実行することが可能になります。
3.3 自社データの活用
AMCを利用すれば、Amazonだけでなく、自社ECの購買データを活用することもできます。
AMCでは、これまでAmazon広告管理画面では見られなかったAmazon広告のデータと、企業側で保有する顧客データ(ファーストパーティーデータ:1st Party Data)などを突合できます。これにより、従来の分析ツールでは得られなかった、より深いユーザー心理を分析・理解することが可能です。
また広告の配信時にも、自社ECのデータを活用することで、自社サイトでは購入しているもののAmazonでは購入していないユーザーや、逆にAmazonでは自社商品を購入しているものの自社ECには来ていないユーザーに対してターゲティングをしていくことも可能になります。
このように、特定のプラットフォームだけでなく、トータルなEC事業で事業利益を拡大していくためにも自社のデータを活用できるAMCの活用は有効な手段なのです。
4. AMCの利用について
4.1 利用条件
AMCは無条件で利用できるわけではありません。AMCを利用するには、Amazon DSP広告のアカウントを作る必要がある。DSP広告のアカウントを開設するには、Amazon Adsの営業担当者に依頼するか、Amazon Adsパートナーネットワークに登録されているパートナー企業(代理店)を通じて行う必要があります。
そのためAmazon出品者であればだれでも利用できるわけではなく、利用は一部の企業に限定される形になります。
またこれまでAMCを活用して配信できる広告はAmazon DSP広告に限られていましたが、直近のAmazonの発表により、今後はスポンサー広告も対象となることが明らかになりました。
4.2 注意点
AMCには一般的なレポート画面が存在せず、必要なデータを取得するためにはSQLクエリを自ら作成する必要があります。
初心者でも利用を始めやすいようAmazonや認定パートナーがサンプルクエリや学習リソースを提供しているものの、より詳細かつ効果的な分析を行うためにはSQLクエリを理解し、自社で高度なカスタマイズを行う必要があります。
AMCを効果的に活用するには、SQLの知識とAmazonのデータセットに対する深い理解が求められます。これらを活用することで、精度の高い広告戦略の設計が可能になります。
4.3. 期待される効果
AMCを活用することで様々な効果が得られますが、特に重要なのは広告運用効率の改善です。具体的にはACoSやACoTSの改善、新規獲得、広告予算の配分の見直しなどが可能になります。
昨今のAmazonにおいては、参入する事業者と総広告費の増加に伴い、CPCが高騰する傾向にあります。そのため広告の費用対効果が悪化し、利益を圧迫しているのです。
そのような中で効率的に新規顧客を獲得していくためにも、AMCによる分析が有効です。AMCを用いればどのようなキーワード=ターゲットからの新規獲得率が高いか、どのキーワードは既存のリピーターが多いか、などを明らかにすることができます。
このような細やかで精度の高い分析に基づき、より効果的な広告配信が可能になります。他にもユーザーが購買に至るまでにどのような経路を辿ったのかや、LTVを算出することも可能です。
これらの分析やそれを活用した広告配信についての事例資料もご用意しておりますので、こちらも是非ご覧下さい。
5. まとめ
Amazon Marketing Cloudは、Amazonにおける広告施策を、詳細なデータに基づいて分析することで最適な打ち手を導き出すとともに、実際の購買データをもとにした高い精度のオーディエンスターゲティングを通じて広告効果を最大化するための強力なツールです。
AMCの登場により、ECモールにおいても新規率やLTVを考えながらマーケティング施策を実行していくことは標準化されていくでしょう。トータルなEC戦略が当たり前になる時代には、AMCをうまく活用できることが、市場シェアの拡大につながっていくのです。
AMCの活用については株式会社GROOVEにお任せください!
株式会社GROOVEはAmazon Adsの認定パートナーであり、Amazon DSP広告、AMCを用いた分析に長けたコンサルティング会社です。
AMCについては早い段階から着手し、様々な試行を繰り返すことで、独自に高品質の運用方法を編み出しています。
AMCの活用やAmazon広告の運用において新規獲得や費用対効果にお悩みのある方は、是非株式会社GROOVEにご相談下さい。また実際にAMCを活用し売上を伸ばした事例もご紹介しておりますので併せてご覧下さい。
監修者 : 田中 謙伍
株式会社GROOVE 代表取締役
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社。出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、マーケティングマネージャーとしてAmazon CPC広告スポンサープロダクトの立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。
【登録者数 5万人のYouTubeチャンネル】
たなけんのEC大学:https://www.youtube.com/@ec8531
執筆者 : 松岡 孝明
株式会社GROOVE マーケティング事業部
大学卒業後、大手百貨店に就職。店頭での販売やマーケティング経験を積んだ後、ECコンサルティング事業を行なう企業へ転職。現在は株式会社GROOVEにて、マーケティングを担当。EC運営に関するお役立ち情報の発信や、セミナーの企画などを行なっています。